2017年10月26日木曜日

デンソー逆転勝訴判決(最高裁平成29年10月24日判決)がでました!


1. デンソーのシンガポール子会社へのタックスヘイブン対策税制適用の可否が争点となったデンソー事案につきましては、このブログで何度がとりあげています。
 
2. この事案は、平成22年、刈谷税務署長が、デンソーに対し、租税特別措置法66条の6(いわゆる「タックスヘイブン対策税制」)に基づき、デンソーのシンガポール子会社Aの課税対象留保金額に相当する金額はデンソーの平成20(2008)年3月期及び21(2009)年3月期の益金に算入されるとしておこなった法人税の更正処分等(以下、「本件各処分」といいます。)に対し、デンソーがその取り消しを求めたものです。
 名古屋地裁平成26年9月4日判決は、デンソーの主張を認め、本件各処分を一部取り消しました。
http://hisaya-avenue.blogspot.jp/2014/09/blog-post_9.html
 これに対し、名古屋高裁平成
28年2月10日判決(藤山雅行裁判長)は、原審の国敗訴部分を取り消し、デンソーが逆転敗訴していました。
http://hisaya-avenue.blogspot.jp/2016/02/28210.html
 また、平成22(2010)年3月期および平成23(2011)年3月期について、名古屋地裁平成29年1月26日判決が、デンソーの主張を認め、課税処分を取り消しました(デンソー勝訴)。
https://hisaya-avenue.blogspot.jp/2017/02/tokyo-district-courts-decision.html

 そして、一昨日、今度は、上告審である最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)が、デンソーに対する本件各処分等を一部取り消した第一審判決を支持する内容の判決、すなわち、再び、デンソーを逆転勝訴させる判決をだしたのです(最高裁第三小法廷平成
29年10月24日判決)。
 この結末は、先日、上告審で弁論期日が開かれていたことから、ある程度は、予想できたといえます。
http://hisaya-avenue.blogspot.jp/2017/07/the-supreme-court-decided-to-hear.html

3. 我が国では、昭和53年からタックスヘイブン対策税制が導入されています。
 この税制は簡単にいうと、内国法人等の「外国関係会社」(日本資本全体で計50%超を直接・間接に保有する外国法人)のうち、一定の要件※を充たす「特定外国子会社等」の所得に相当する金額について、内国法人等の所得とみなし、それを合算して課税(会社単位での合算課税)するという制度です。
 なので、外国子会社合算税制(または「CFC(Controlled Foreign Company) 税制」)とも、いわれますね。
 デンソー事件最高裁判決は、同税制について、タックスヘイブンに子会社を設立して当該子会社に所得を留保することにより、「我が国における租税負担を回避する事例が生ずるようになったことから、このような事例に対処して税負担の実質公平を図ることを目的として」いる旨、述べています。
 このように、同税制は、租税回避の防止・税負担の実質的公平が目的であるとされるので、「特定外国子会社等」が、真正の事業活動を行っている場合を想定して設けられた適用除外基準(いわゆる事業基準、実体基準、管理支配基準、非関連者基準又は所在地国基準)を充たしていれば、合算課税されることはありません。
 この点、デンソー事件最高裁判決は、「特定外国子会社等であっても、独立企業としての実態を備え、その所在する国または地域において事業活動を行うことにつき十分な経済合理性がある場合にまで同税制を適用すると、我が国の民間企業の海外における正常かつ合理的な経済活動を阻害する恐れがある」としています。
 また、適用除外要件のうち、租税特別措置法66条の6第4項が株式の保有を主たる事業とする特定外国子会社等について事業基準を満たさないこととした趣旨については、「株式の保有に係る事業はその性質上我が国においても十分に行い得るものであり、タックス・ヘイブンに所在して行うことについて税負担の軽減以外に積極的な経済合理性を見出し難いことにある。」としています。


  ※適用対象となるか否かを判定するための基準税率を「トリガー税率」といっていました。
平成29年度税制改正では、「トリガー税率」は廃止され、制度適用免除基準としての「税率基準(租税負担割合)」となるようです。

4.(1) ところで、デンソーは、35の国と地域で事業を展開し、全世界に200以上のグループ会社を有する自動車関連部品の製造販売等を目的とする株式会社であり、問題となったシンガポール子会社Aは、豪亜地域における各拠点間の事業活動の調整およびサポートを行う目的で、シンガポールに地域統括センターとして設立されました。
 Aは、ASEAN台湾域内のグループ会社の持株会社の側面もありましたが、持株に関する業務(株主総会、配当処理等)のみならず、豪亜地域の地域統括会社として、地域企画、調達、財務、材料技術、人事、情報システム及び物流改善に係る地域統括に関する業務(「地域統括業務」)を行っていました。
 Aは、シンガポールの現地事務所を賃借し、事務用什器備品、車両等の有形固定資産を保有し、これらはすべて持株に関する業務以外、大半は地域統括業務に供されていました。
 現地勤務の従業員は三十数人いましたが、20人以上は地域統括業務に従事し、持株に関する業務のみに従事しているものはいませんでした。
 他方、Aの収入金額のうち、地域統括業務の中の物流改善業務に関する売上額は、収入金額の約85%を占めておりましたが、所得金額(税引前当期利益)となりますと、保有株式の受取配当の占める割合が約9割となっていました。
(2)このような事案のもと、名古屋高裁(控訴審)は、次のように、地域統括業務は、株式保有業に含まれる業務にすぎないとし、また、実質的にもAの主たる事業は株式の保有であるとして、Aは事業基準を満たさず、本件各処分は適法であると判示しました。
 「持株会社とは、…『株式(社員の持分を含む。以下同じ。)を所有することにより、国内の会社の事業活動を支配することを主たる事業とする会社』をいうのであるから、単に株式を保有して配当を受けるにとどまらず、株式所有に基づく資本参加によって会社機関の意思形成に決定的な影響力を与えることをもって、本来自由であるべき他会社の事業活動をその主要な事項に関し自己の意思に従って統一的に指揮することを通して当該株式発行会社を支配するものを含むのであって、このような持株会社は、本件で問題となっている地域統括機能を含む被支配会社に対する管理機能を中心的な業務とするものである。したがって、地域統括業務等の被支配会社を管理する業務は、株式保有業に含まれる業務にすぎず、株式保有業から独立した事業とはいえない。」
(3)これに対し、最高裁は、まず、次のように、Aの行っていた地域統括業務は、株式の保有に係る事業に含まれないと判示しました。

 「他の会社の株式を保有する特定外国子会社等が、当該会社を統括し管理するための活動として事業方針の策定や業務執行の管理、調整等に係る業務を行う場合、このような業務は、通常、当該会社の業務の合理化、効率化等を通じてその収益性の向上を図ることを直接の目的として、その内容も上記のとおり幅広い範囲に及び、これによって当該会社を含む一定の範囲に属する会社を統括していくものであるから、その結果として当該会社の配当額の増加や資産価値の上昇に資することがあるとしても、株主権の行使や株式の運用に関連する業務等とは異なる独自の目的、内容、機能等を有するものというべきであって、上記の業務が株式の保有に係る事業に包含されその一部を構成すると解するのは相当ではない。」
 また、租税特別措置法66条の6第3項及び4項の「主たる事業」の判定について、「特定外国子会社等の当該事業年度における事業活動の具体的かつ客観的な内容から判定することが相当であり、特定外国会社等が複数の事業を営んでいるときは、当該特定外国子会社等におけるそれぞれの事業活動によって得られた収入金額又は所得金額、事業活動に要する使用人の数、事務所、店舗、工場その他の固定施設の状況等を総合的に勘案して判定するのが相当である。」としました。
 そして、Aの主たる事業は、地域統括業務であったと認定し、Aは事業基準を満たし、また、その他の適用除外要件もすべて満たすので、これを満たさないとしてなされた本件各処分は違法であると判示したのです。


5.雑感
 最高裁判決でも触れられていますが、タックスヘイブン対策税制については、平成22年度税制改正により、企業実態を伴っていると認められる統括会社(事業持株会社、物流統括会社)の所得については合算対象外となるように、適用除外要件等について、見直しがありました。この見直しの趣旨については、最近のグローバル経営を実施する我が国企業は、世界の地域ごとに海外拠点を統括する統括会社をおき、その活用により、グループ企業の商流の一本化、間接部門の合理化等を通じて、収益向上をはかっているという現状があることから、このような統括会社は、租税回避目的で設立されたものとして捉えるのではなく、その地において事業活動を行うことに十分な経済合理性があると評価することが適当であるとされています(「平成22年度税制改正の解説」)。
 穿った見方をすると、デンソーに対する更正処分等は、この改正前に…とみえなくもありません。
 この点、そもそも、同税制は、前述のとおり、租税回避の防止・税負担の実質的公平が目的であるとされるところ、この改正は、租税回避に利用し得る抜け道があったため税負担の実質的公平の観点からこれを塞ぐべくおこなわれた…というものではありません。
 生き馬の目を抜くような厳しい国際社会にあって、海外企業との価格競争に鎬を削っている日本企業の間に、ヨーロッパ、米、欧亜といった地域ごとに、グループ企業を統括する会社を設立する動きがあるのに配慮し、適用除外要件を緩めようとしてなされた改正です。
 
東京高裁は、課税庁の判断を支持していますので、本事案は、難しい法適用上の論点を含んでいるとはいえますし、改正法が遡及適用されることはないのですが、やはり、同制度および適用除外要件がもうけられた趣旨にそって、本事案の認定事実を評価すると、最高裁の結論に至るべきではないかと思えてなりません。


2017年9月30日土曜日

ローエイシア東京大会2017 (30th LAWASIA Conference)


1. 今月19日と20日、ローエイシア東京大会2017に参加しました。
 LAWASIA (“The Law Association for Asia and the Pacific”) は、アジア・太平洋地域の法律専門家が参加している団体が、その主催国において持ち回りで開催している国際会議です。開会式には皇太子殿下・同妃殿下が出席されたので、テレビのニュースでご覧になられた方もいらっしゃるかと思います。
 昨年7月、イギリスのロンドンで開催された国際家族法会議に参加した際にご縁があって、ローエイシアの組織委員会の家族部会員になり、事前の準備は大したことはできなかったのですが、今回の参加となりました。
 冒頭、谷口安平教授の基調講演は、アメリカの証拠法の大家であるウイグモアが若き日に慶應義塾大学に招聘されていた際に研究したという江戸時代の紛争解決の話で、とても印象深いものでした。
 その後は、家事法のセッションを中心に…、具体的には、「高齢者と法的対応」「養育費の算定及び効果的回収に関する各国の制度と国際的事案への対応」「移民をめぐる諸問題
~とくに「家族」と「子ども」に焦点を当てて~」「家事部会ミニ講演会『代理母出産』」などを、拝聴しました。どれも大変勉強になりましたが、特に、「家事部会ミニ講演会『代理母出産』」は、家族部会員として準備にかかわったので、感慨深かったです。  
養育費のセッション会場

 
2.昔話…(歳のせいです…汗)
 ローエイシアの会場はホテルニューオータニだったのですが、ホテルニューオータニは、かつて銀行に勤めていた頃、
Asian Bankers Associationの東京大会を開催するために、様々な準備に奔走した思い出があります。当時、アジア部に在籍していたのです。あまりに忙しく、日付がかわってから帰宅ということも多く、お風呂でウトウトとして、マイペットで髪を洗いそうになったことを思い出します。
https://www.aba.org.tw/conference/9th-aba-conference/

 ところで、ホテルニューオータニへは、いつも、赤坂見附駅を利用していましたが、今回、初めて、四ツ谷駅を利用しました。
 上智大学と外堀の土手の間の通りは、小学生の頃、四谷大塚進学教室の日曜教室に通うため、よく歩きました。5年生では、四谷会場が一番上ですが、6年生では、中野会場、四谷会場となります。6年生になってからは、中野に上がったり、四谷に下がったり…。細かいことは覚えていませんが、久しぶりに歩いていたら、胸の奥のどこかがチクりとする気がしました。
昔、通った四谷の土手

紀尾井町の名前のもとになった紀州、尾張、井伊の大名屋敷跡



2017年8月26日土曜日

長良川の鵜飼い Cormorant Fishing (“UKAI”) on the Nagara River


1.8月もあと数日で終わりですね。
 東京では降水継続日数が21日となったり、各地で記録的大雨が降ったり、今年の夏は雨が多かった印象です。名古屋でも、ひどい雨が降りました。

2.今年は、夏休みを利用して旅に出るということはなかったです。帰省したくらいでしょうか…。
 でも、知財ネットの農水法務支援チームの一員として、「世界農業遺産」の原稿を書かなければならなかったので(「知財ぷりずむ」9月号に掲載予定)、近場ですが、7月末に鵜飼に行きました。本日は、その話を…。
  
  <後記>
  「知財ぷりずむ」9月号(Vol.15 No.180)の記事は、こちら(↓)
  https://iplaw-net.com/doc/2017/chizaiprism_201709_4.pdf

 「世界農業遺産」ってご存知でしょうか。
 ユネスコの「世界遺産」とは別物でして、国際連合食料農業機関(FAO)がはじめた仕組みで、日本では、8地域が指定されています。「世界遺産」よりは馴染みが薄いかもしれませんが、農水省のパンフレットでは、
社会や環境に適応しながら何世代にもわたり形づくられてきた伝統的な農林水産業と、それに関わって育まれた文化、ランドスケープ、生物多様性などが一体となった世界的に重要な農林水産業システム
と説明されています。
 ところで、上記原稿では、みなべ・田辺の梅システム(和歌山県)をとりあげているのですが、名古屋市から一番近い世界農業遺産は、「清流長良川の鮎」(岐阜県)なので、鵜飼の写真を載せたくて、日帰りで、長良川鵜飼をみにいった…という次第です。
 鵜飼は、ご存知の通り、鵜呑みする鵜を使って鮎を獲る伝統漁法ですが、なんと、約1300年前には、日本で鵜飼が行われていたそうで、『隋書』の「東夷伝倭国条」や、『古事記』や『日本書紀』には、鵜飼に関する描写があるそうです。
 現在、全国12か所において鵜飼が行われていますが、その中でも、長良川の鵜飼は、鵜匠が宮内庁式部職(世襲。しかも、男性のみ。長良川では6家。)であることで有名ですよね。長良川鵜飼ミュージアムを訪れたところ、702年(大宝2年)の美濃国の戸籍に鵜飼を職業としていた人の記録が残っていたことや、岐阜城を居城とした織田信長が武田信玄の使者を鵜飼でもてなしたとか、1615年徳川家康が大坂夏の陣の帰途、秀忠と鵜飼を見たとか、戦国武将との関わりも紹介されています。ちにみに、今年は、信長公が岐阜と命名してから450年目にあたるそうです。
 江戸時代には、尾張藩の保護を受け、やがて、観光化もされたとのこと。松尾芭蕉は、「おもしろうて やがて悲しき 鵜舟かな」と詠んでいます。
 1878年(明治11年)、明治天皇の岐阜ご巡行の際、岩倉具視らから鵜鮎が御膳に献上され、1890年(明治23年)、長良川の3か所が御猟場に定められ、鵜匠は宮内省主猟局に属するようになりました。
 時代がくだって、1936年(昭和11年)には、チャールズチャップリンが鵜飼をみて感激し、戦後再訪したといいますから、驚きです。
 2015年(平成27年)には、「長良川の鵜飼漁の技術」が国の重要無形民俗文化財に指定されています。岐阜市では、ユネスコ無形文化遺産のリスト入りも目指しているみたいですね。ユネスコ無形文化遺産については、こちら↓。https://iplaw-net.com/doc/2015/chizaiprism_201508_2.pdf
 長良川鵜飼ミュージアムを訪問後、いよいよ、長良川鵜飼観覧船に乗船。船はすぐに川岸に停泊し、まずは、予約しておいたお弁当をいただきます。日がとっぷりとくれた頃、花火を合図に、川沿いのホテルや旅館の電灯が消されます。鵜舟の順番はクジで決めるとのこと。鵜舟一艘に観覧船が並走する「狩り下り」、そして、「総がらみ」でクライマックスをむかえます。総がらみをおえた鵜舟は、観覧船と観覧船の間に入って、漁の片づけである「あがり」を行います。
 長良川鵜飼を拝見するのは、3度目だったと思いますが、いつもながら、幽玄な世界に浸ることができました。
長良川うかいミュージアム
Nagaragawa Ukai Museum 

河戸(こうど。鵜舟を係留する川岸。)。
なんと鵜舟はモーター付きなんですね。
川向うにみえるのが金華山。
頂上に岐阜城がみえます。


鵜飼開始の合図の花火。
観覧船は、船頭さんが棹と櫂で操ります。
解説もしてくれます。
篝火をたいた鵜舟にのる
鵜匠と中乗りさん。
「あがり」の
白いお髭の鵜匠さんと鵜。

  

2017年7月28日金曜日

タックスヘイブン対策税制に関するデンソー事件で、弁論が開かれますThe Supreme Court decided to hear Denso’s appeal, and oral arguments will be held


デンソーのシンガポール子会社へのタックスヘイブン対策税制適用の可否が争点となった訴訟につきましては、このブログで何度がとりあげています(↓)。
http://hisaya-avenue.blogspot.jp/2014/09/blog-post_9.html
http://hisaya-avenue.blogspot.jp/2016/02/28210.html
https://hisaya-avenue.blogspot.jp/2017/02/tokyo-district-courts-decision.html

デンソーが、いわゆるタックスヘイブン対策税制によりシンガポール子会社の課税対象留保金をデンソーの所得に合算するなどとしてなされた更正処分について、適用除外に当たると等してを取消しを求めたのに対し、名古屋地裁平成26年9月4日判決は、デンソーの主張を認め課税処分の一部取消しを命じたものの、名古屋高裁平成28年2月10日判決(藤山コート)は、原審の国敗訴部分を取消し、デンソーが逆転敗訴していました。

一昨日の日経新聞朝刊に、最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)が上記裁判に係る上告審弁論期日を本年9月26日に指定したとの記事がでていました。
 上告に理由がないときは口頭弁論を開かないで上告棄却の判決をだせるので、弁論期日の指定があったということは、控訴審判決が見直される可能性もあります。
 なので、デンソー事件の行方には要注目です。

Regarding Denso’s case, the Tokyo District Court in its decision dated September 4, 2014, repealed an order by tax authorities for DENSO, indicating that DENSO’s subsidiary in Singapore was covered by the exemption of the anti-tax haven (CFC) rules.  However, the Tokyo High Court in its decision dated February 10, 2016, overturned the Tokyo District Court decision.
On July 25, 2017, the Supreme Court decided that it will hear Denso’s appeal, and oral arguments will be held on Sept. 26, 2017.  If the Supreme Court determines that there are no grounds for appeal, it may reject the appeal without hearing oral arguments, and so, it means that there are possibilities that it will decide in favour of the appellant (DENSO).

→ <後記>   やはり、名古屋高裁平成28年2月10日判決は、上告審である最高裁平成29年10月24日判決で再びひっくり返り、デンソーの逆転勝訴となりました。
https://hisaya-avenue.blogspot.jp/2017/10/291024.html

2017年6月25日日曜日

日本税法学会 Japan Tax Jurisprudence Association


6月10日から11日まで、大阪大学会館で開催された日本税法学会の第107回大会に行ってまいりました。
 毎日、目の前の仕事におわれていますが、ひと時、アカデミックな雰囲気に浸れました。
 肝心の中身についても触れたいなと思っておりましたが…(汗)。
 断念します m(_ _)m
初めて訪れた大阪大学は
緑豊かで素敵でした。
会場となった大阪大学会館も、

レトロでよかったです。

2017年5月28日日曜日

MiKKによる国境を越えた家族の紛争(含ハーグ条約)に係るメディエーションのセミナー The Training Course on Cross-Border Family Mediation organized by MiKK


5月12日から14日まで、大阪大学中の島センターで行われたMiKKによる国際家事メディエータートレーニング講座に参加しました。
 MiKKは、国境を越えた子の連れ去り等の事案(いわゆるハーグ条約事案)等を扱うメディエーションを支援するドイツの非営利機関です(調停機関ではありません)。MiKK主催の国境を越えた家族の紛争に係るメディエーションのセミナーに参加するのは、一昨年の9月以来であり、また、メディエーションのロールプレイを経験するのは3回目。日本では、メディエーターとしてのトレーニングをしてもらえるセミナー等は少ないので、貴重な機会であり、大変勉強になりました。
 
I took part in a training course on cross-border family mediation organized by MiKK , held in Osaka from November 25 until November 27.  MiKK is a non-profit organization which is active in the fields of mediation in cases of cross-border child abduction, and so on.
As there are not so many opportunities for mediators to be trained in Japan, the seminar was quite a valuable experience to me.

2017年5月8日月曜日

IBM事件と要件事実論 ~その3~


1. 2回にわたって、少しでも理解が深まればと、専ら自らの頭の整理のために、「IBM事件と要件事実論」と題してブログを書いてみましたが、結局、あまり、すっきりとしませんでした(笑)。
 → その1
   その2

 つくづく、理解&実力不足を感じます(涙)。

2. 予定していなかったけど、3回目の今日は、「規範的要件」の評価根拠事実をどのように位置付けるかに係る主要事実説vs間接事実説をもう少し掘り下げてみようと思います。
 そこで、弁論主義の簡単な説明からはじめます。避けて通りたいと思ったけど、やっぱり、避けられないかなと…(汗)。

 ええと…。「弁論主義」は、前々回のブログでご紹介した「当事者主義」の’仲間’(もしくは’子分’(笑))です。つまり、裁判所と当事者の間の役割分担についての考え方です(立証責任は、当事者間の分担の話ですが…)。
 ところで、民事訴訟は、



訴えの提起
  ↓
審理(口頭弁論と証拠調べ)
  ↓
判決

という3段階に大きく区分されますが、
訴訟当事者の訴訟行為に注目すると、



申立て(訴訟当事者が裁判所に対し、一定の内容の裁判を求める意思を表現すること)
  ↓
主張(訴訟当事者が、申立てを基礎付けるため、法律効果あるいは具体的な事実の存否について陳述すること)
  ↓
立証(訴訟当事者が、事実上の主張を証明するために行う行為又は活動)

となります。

 この申立てのレベルでの当事者主義を「処分権主義」、主張・立証のレベル(攻撃・防御のレベル)での当事者主義を「弁論主義」といいます。
 民事訴訟では、このレベルを意識することが大切です。
 そして、ざっくりいうと、「処分権主義」は、「裁判を利用するか、利用するとして、どういう請求をたてるかは、当事者の権限であり、責任でもある。」というものです。また、「弁論主義」は、どのような主張をし、そのためにどのような立証をするかは、当事者の権限であり、責任でもある」となります。
 民事訴訟は、私的自治の原則が妥当する私益を巡る紛争を対象としているので、申立レベルや主張・立証レベルは、当事者主義が原則として採用されているのです(勿論、民事訴訟には、公益的側面もあり、特に、手続面では、原則として、職権主義が採用されています)。
 

3. さらに、「弁論主義」の内容は、以下の3つのテーゼで説明されます。



第1テーゼ 主張責任の原則
  裁判所は、当事者の主張しない事実を判決の基礎としてはならない。
  →当事者が弁論において主張した事実(訴訟資料)だけが判決の基礎となる。

第2テーゼ 自白の拘束力
   裁判所は、当事者間に争いのない事実はそのまま判決の基礎としなければならない
  →自白(当事者が自己に不利益な事実を争わない旨の陳述)された事実について、裁判所が証拠調べして自白に反する事実認定をすることはできない。c.f.民事訴訟法179条

第3テーゼ 職権証拠調べの禁止
   当事者間に争いのある事実を証拠により認定するには、当事者の申し出た証拠方法からしなければならない。
  
  ※第1テーゼ、第2テーゼの対象となる事実は、主要事実です

初めてきくと、先ほどの弁論主義の説明から飛躍を感じるかもしれません。ですが、それほど遠くもないです。要は、裁判所と当事者の役割分担として、主張・立証は、当事者がやってくださいということです(第一&第三)。
 ただ、誤解を恐れずにいうと、弁論主義は、裁判所の事実認定において、足かせ(制約)になっている面もあります。なぜなら、主要事実については、当事者が主張してくれなければ、判決の基礎とすることができませんし(第一)、当事者間で争いがある事実について、「こういう証拠がこんなところにあるのでは?」と思っても、当事者のどちらかが提出してくるのを待たなければならないというのが原則ですし(第三)、さらに、当事者間で争いがない事実については、「本当は当事者の主張と違うのでは?」と思っても、そのまま判決の基礎としなければならないからです(第二)。
 裁判では、当事者の一方が主張した事実について、他方は、認否をさせられます(認めるのか、認めないのか等をいわされます)。そして、原則として、当事者間に争いのある「争点」について、各当事者は、攻撃・防御をつくしていくのです。

 ところで、第一テーゼには、不意打ち防止機能(相手方の防御の機会の保障)があるといわれます。たとえば、前々回の原告が被告に100万円貸したから返してくれという例で、裁判所が、「あれ?原告は100万円貸したと主張し、被告はこれを認めているけど、本当は100万円をもらったんじゃないの?」との心証をいだき、裁判所がいきなりそのような認定をしたら、原告はびっくりです。原告としては、「被告がそのような主張をしていなかったから、反論のしようもなかったし、たいした立証をしなかったのだ。裁判所がその点を気にしていたのなら、もっと、『貸した』ことがわかる証拠を提出できた。裁判所はひどい。不意打ちだ!。」となりますよね。
 なお、裁判所は、不明な点等について、当事者に質問したり、立証を促したりする権能がないわけではありません。これを「釈明権」といいます。
 けれど、原告と被告が100万円の貸金の存在について争っていないのに、裁判所が、「本当は100万円をもらったんじゃないの?被告さん、これこれの証拠はありませんか?あったら、裁判所にだしてください!」などと割って入っていったらどうでしょうか。原告は、裁判所が被告の味方をしているように感じてしまうのではないでしょうか。釈明権を過度に行使すると、“不公平な裁判所”となり、弁論主義に反する可能性があるのです(逆に、釈明権を適切に行使しないと、“不親切な裁判所”になります)。

4.  租税訴訟は、通常、行政訴訟ですが、行政訴訟にも弁論主義は妥当するのでしょうか。この点、課税処分取消訴訟を含む租税訴訟においても、通常の民事訴訟と同様に弁論主義が妥当するとされています(『租税訴訟の審理について』。行政事件訴訟法24条により、職権証拠調べが認められていますが、実務では、職権証拠調べがなされることはほとんどないようです。)

5. さてさて。
 ようやく、「規範的要件」の評価根拠事実をどのように位置付けるかに係る主要事実説vs間接事実説についてです。
 白表紙によると、かつては、間接事実説が有力だったようです。
 間接事実説の理論的欠点は、もし、「規範的要件」、たとえば、「過失」自体が主要事実だとすると、これを直接立証することが理論上可能でなければなりませんが、具体的事実(「車両の速度を落とさなかったという事実)から切り離された「過失」自体を証拠によって直接立証することはできないことは明らかだと解される点にあります。また、実際上の欠点としては、さきほど説明した弁論主義の第一テーゼに関連して、指摘されています。すなわち、もし、「過失」が主要事実だとすると、原告は、「過失があった」と主張すれば当事者としての役割を果たしたことになってしまい、被告が的確な反論をできず、事案によっては、不意打ちになる恐れがあると解されるのです。白表紙は、「このような実際の弊害を防止するものとして釈明権の行使に期待することになろうが、主張責任によってもたらされる不利益がなくなった当事者に対して、釈明権行使だけで適切な事実主張をさせることは容易ではないであろう。」としています。
 これに対し、近時の有力説とされる主要事実説では、規範的評価を根拠づける評価根拠事実のみが主要事実となるので、これにあたる具体的事実(車両の速度を落とさなかった、前方不注意だったなど)について主張責任がある一方、規範的評価自体(「過失」)については主張責任がないことになります。白表紙は、主要事実説の実際的な難点として、第一テーゼのもと、当事者が主張しない評価根拠事実は、いかに有用であったとしても、裁判所がこれを基礎にできない点をあげています。
 そして、白表紙は、主要事実説、間接事実説、どちらも問題を抱えてはいるが、主要事実説のさきの難点を救うために、以下のような配慮がされることを前提として、主要事実説を妥当としています。すなわち、主要事実説の難点は、通常、立証された事実と主張内容とに食い違いがある場合に問題となるのであり、裁判所は、相手方の防御権を実質的に損なわない限り、立証活動の規制を比較的緩やかにし、当事者の主張しようとする真意を的確に把握して合理的に解釈し(いわゆる善解)、また、主張の欠落に対して釈明権の適切な行使することが期待されます。

6. IBM事件でいうと、「不当」性の要件にせよ、最高裁が用いる基準、経済的合理性を欠いているか否かにせよ、具体的事実から切り離して直接立証することは困難なのではないかと思われます。なので、これを根拠づける評価根拠事実について、国に主張立証責任があるところまでは、異論はないのではないでしょうか。
 その評価根拠事実が、主要事実なのか、間接事実なのか…。この辺りは、白表紙もいうように、主要事実説をとるとしても、その難点に配慮し、柔軟な対応が望まれることもあるのではないかと思われます。、

 そして、最も重要な問題は、評価根拠事実として、どのような具体的事実を主張・立証すれば、「不当」性の要件が認められるか、なのではないでしょうか。
 この点、控訴審判決は、「経済的合理性を欠く場合には,独立かつ対等で相互に特殊関係のない当事者間で通常行われる取引(独立当事者間の通常の取引)と異なっている場合を含むものと解するのが相当であり,このような取引に当たるかどうかについては,個別具体的な事案に即した検討を要するものというべきである」と判示します。なので、評価根拠事実に、②は含まれているようです。すなわち、国は、②について、主張立証責任を負うのでしょう。
 他方、「『不当』か否かを判断する上で,同族会社の行為又は計算の目的ないし意図も考慮される場合があることを否定する理由はないものの,他方で,被控訴人が主張するように,当該行為又は計算が経済的合理性を欠くというためには,租税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在しないと認められること,すなわち,専ら租税回避目的と認められることを常に要求し,当該目的がなければ同項の適用対象とならないと解することは,同項の文理だけでなく上記の改正の経緯にも合致しない」とも判示しています。これを素直に読むと、①や③は、国が主張立証責任を負う評価根拠事実ではないように思えます。でも、経済合理性の判断で考慮しないわけではないといっているので、納税者側で、①や③について主張立証してみるしかないように思います。

7. 更なる問題としては、②「独立当事者間の通常の取引と異なっている」という評価根拠事実も、また、「通常」というような評価を含んでいることです。
 しかも、ざっくりとした比較でいけませんが
 ’法人税の負担を不当に減少させる’< ’独立当事者間の通常取引と異なっている’
と感じる方は、少なくないのではないでしょうか。
 法人税法132条は、税務署に極めて大きな権限を与えているところ、控訴審判決によれば、同族会社の取引が独立当事者間の通常の取引と異なっているだけで、「不当」性の要件をみたしているとして判断される可能性があり(正当な目的があっても、どの程度考慮されるかわかりません)、恐ろしいように思います。
 谷口教授は、控訴審判決について、「不当性要件の射程を『大きく拡張するもの』であり、納税者が主張するように、租税法律主義に違反する」と記しておられます。

 なお、金子宏先生の『租税法(第22版)』(弘文堂)では、
「不当」性
→経済的合理性を欠いている場合
→①異常ないし変則的で、②租税回避以外にそのような行為・計算を行ったことにつき、正当で合理的な理由ないし事業目的が存在しないと認められる場合のこと
としておられます。
ただ、ここで、
→独立・対等で相互に特殊関係のない当事者間で行われる取引とは異なっている取引には、それにあたると解すべき場合が多いであろう
 というのがでてきます。
 ここは、第17版以降に記載の変更があったところで、私のもっている第14版では、「経済的合理性を欠いている場合とは、それが異常ないし変則的で租税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在しないと認められる場合のみでなく、独立・対等で総合に特殊関係のない当事者間で通常行われる取引(…)と異なっている場合をも含む」と記載されています。この点、太田弁護士が金子先生にこの変更の趣旨を確認したとおっしゃっておられるのが、大変興味深いです(税務弘報
64巻1号12頁以下)。
 また、金子先生は、①と②の2点を、’主要な論点’としてあげておられます(ここも、第21版以降、3点→2点への変更がありました。)。
 ’主要な論点’というのは、要件事実的にいうと、評価根拠事実(現在の有力説では、主要事実でもあります。)を意味するのではないかと思われます。
 ①と②を要求すると、不等号としては、’>’になるような気がしないでもないですが(笑)、この立証が、独立当事者間の通常の取引と異なるとの立証ととりかえ可能であるのなら、控訴審判決と大差なくなってしまうようにも思われます。