ラベル コンプライアンス の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル コンプライアンス の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2018年3月25日日曜日

「新民法対応 契約審査手続マニュアル」


1. 週末、春爛漫。
 今年は、突然、春が訪れたような気がします。

 先週、ようやく、早咲きの名古屋市東区泉の大寒桜の並木道が濃いピンクにそまったと思ったら、桜通の枝垂れ桜や久屋大通のソメイヨシノ、コブシなども一斉に咲き始めました。


二葉館
ソメイヨシノとテレビ塔
コブシ
 
桜通の枝垂れ桜

2. いろいろとブログに書きたいなと思っている法律の話題もあるのですが、なにかとバタバタとして難しいです。
 とりあえず、改訂に関わった本の宣伝を…。
 10年前の平成20年2月に発行された『類型別 契約審査手続きマニュアル』は、私が、丁度、名古屋テレビで企業内弁護士をしていた頃購入し、参考書として職場に常備しておりました。
 一昨年、運よく、同書の改訂のために組成された愛知県弁護士会法律研究部契約審査チームに入れていただくことができました。私が担当したのは、「第10章 1」の「フランチャイズ契約書」の改訂と、新しく設けられた「第6章 3」の「キャラクター商品化許諾契約」の執筆です。
 同書の改訂にあたっては、名古屋で活躍されている企業の法務部の方々の貴重なご意見をうかがうべく、意見交換会や勉強会が開催されました。また、今回の改訂は、新民法に対応しています。同書の改訂に関われることができたのは、誠に幸甚なことでした。

 同書は、既に、本年3月1日に発行されています。是非、お手にとっていただければと思います。
https://www.amazon.co.jp/%E6%96%B0%E6%B0%91%E6%B3%95%E5%AF%BE%E5%BF%9C-%E5%A5%91%E7%B4%84%E5%AF%A9%E6%9F%BB%E6%89%8B%E7%B6%9A%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB-%E6%84%9B%E7%9F%A5%E7%9C%8C%E5%BC%81%E8%AD%B7%E5%A3%AB%E4%BC%9A-%E7%A0%94%E4%BF%AE%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E9%81%8B%E5%96%B6%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A-%E5%A5%91%E7%B4%84%E5%AF%A9%E6%9F%BB%E3%83%81%E3%83%BC%E3%83%A0/dp/4788283700/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1521969550&sr=1-1&keywords=%E5%A5%91%E7%B4%84%E5%AF%A9%E6%9F%BB%E6%89%8B%E7%B6%9A%E3%81%8D%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB


2016年3月23日水曜日

女性活躍推進法の施行、男女雇用機会均等法と同法施行後間もない頃の銀行時代の思い出


1.女性活躍推進法の施行

(1)  今月いっぱいで終わってしまう朝ドラ「あさが来た」。
 「おなごの大学校」のために奮闘する主人公白岡あさや加野銀行の女子行員に対する当時の社会の風当たり…。大変な時代だったんだなあと思わされます…。
 現在では、女性が学ぶ環境については、随分と改善した感があります(もっとも、例えば、東大学部生の男女比率をみると、まだまだ男子学生の比率が大きいようですが…)
 女性の社会進出全般となるとどうでしょうか。奇しくも、最近、女性の社会進出にまつわる話題が、世間をにぎわせている気がします。「保育園落ちた日本死ね」というママのブログとか、「女性にとって最も大切なことは、こどもを2人以上生むことです。」という中学校長の発言とか…。
 朝ドラの明治時代ほどではありませんが、まだまだ、女性が社会で活躍するには、様々なハードルがあったり、偏見があったりするのでしょうか…。
 そんな中、女性活躍推進法(正式名称は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」)の民間事業主に関係する部分が、間もなく、施行されます。

(2) 同法は、「近年、自らの意思によって職業生活を営み、又は営もうとする女性がその個性と能力を十分に発揮して職業生活において活躍すること(以下、『女性の職業生活における活躍』という。)が一層重要となっていることに鑑み、男女共同参画社会基本法の基本理念にのっとり、…女性の職業生活における活躍を迅速かつ重点的に推進し、もって男女の人権が尊重され、かつ、急速な少子高齢化の進展、国民の需要の多様化その他の社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力のある社会を実現する」ため(同法1条)、昨年8月に制定された10年間の時限立法(同法附則2条)です。
 同法は、労働者301人以上の企業に、女性の活躍推進に向けた行動計画の策定等を義務づけている(同法8条参照)のですが、その事業主行動計画の策定に関する部分の施行が、平成28年4月1日となっているのです。

(3) 労働者301人以上の企業は、自社の女性の活躍状況を把握し、課題分析を行った上で、事業主行動計画策定指針に即して行動計画を策定し、その旨、都道府県労働局雇用均等室を通じて厚生労働大臣に届け出て、社内に周知し、公表しなければなりません。
 女性の活躍状況の把握においては、①採用者に占める女性比率、②勤務年数の男女差、③労働時間の状況、④管理職に占める女性比率という基礎項目について、把握しなければならず、行動計画には、数値目標等を盛り込まなければなりません。
→詳しくはこちら。

 先日の日経新聞の記事(3月16日朝刊)によれば、対象となる企業は、全国で、約1万5000社になるそうです。
 同記事は、日本企業で女性が管理職に占める比率は、約11%(全産業平均)、欧米は20~30%、女性の登用が比較的進んでいるというサントリーホールディングでも、10%(2015年末時点)にすぎず、2020年に15%まで高める計画等としています。

(4)  ところで、男女共同参画社会基本法が制定、施行されたのは、平成11年です。
 同法に基づき、平成22年に閣議決定された第3次男女共同参画基本計画では、2020年(平成32年)に指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする目標に向けた取組みを推進する等と記述されていました。
 昨年(平成27年)12月に閣議決定された第4次男女共同参画基本計画では、平成37年度年末までの「基本的な考え方」と平成32年度までを見通した「施策の基本的方向」「具体的な取組」が記述されています。例えば、国家公務員の本省課室長相当職に占める女性の割合3.5%(平成27年7月)について成果目標7%(平成32年度末)に、待機児童数23, 167人(平成27年7月)について平成29年度末の解消をめざす等です。前者については、逆差別だとの男性の恨み節も聞こえてきそうですね。

 

2.男女雇用機会均等法、同法施行間もない頃の銀行時代の思い出

(1)  社会の仕組みも人々の意識も、一朝一夕にはかわりません。
 男女雇用機会均等法施行間もない頃に銀行で勤務した経験がある身としては、約四半世紀たった今日この頃、隔世の感がある部分と、思ったよりも歩みが遅いと思う部分と、混在している気がします。
 「あさが来た」では、女性行員の結婚退職に触れられる場面があります。この辺り、私の銀行員時代にもまだまだ一般的で、あまり変わっていなかったなあという気もします。
 また、当時、女性行員(一般職のみならず、総合職や専門職であっても…)が、男性行員(こちらは、当時、総合職しかいません。)と行内結婚すると、どちらかが退職しなければなりませんでした。明文の規定はなかったと思いますが、結婚相手の男性行員の将来を考えると、女性行員は、退職する途を選ばざるを得なかったのではないでしょうか(上司や人事部に直談判した専門職もいましたが、結局、結婚退職しました)。

(2)  いわゆる男女雇用機会均等法(「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律」。その後、平成9年に名称及び内容の改正があり。)が制定されたのは、昭和60年(1985年)です。同法により、企業の募集、採用から定年、退職、解雇に至る雇用管理における男女の均等な機会及び待遇の確保などが規定されることになり、翌61年に施行されました。
 つまり、男女雇用均等法施行以前は、男女で賃金体系や定年が違ったりしたわけです。
 もっとも、男女別定年制については、同法施行前、最判昭56.3.24が「女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、専ら女子であることのみを理由として差別したことに帰着するものであり、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効である」と判示しています。この点、同法6条4号は、男女別定年制を明確に禁止しています。
 男女別賃金体系については、雇用機会均等法制定を受け、コース別人事制度が生まれたといわれます。コース別人事制度についても、東高判平20.1.31は、「基幹的業務と定型的・補助的業務と明確かつ截然と区別(二分)することは困難であり,…両者の差異は相対的なものというべきである」「男女の性の違いによって賃金を差別するこのような状態を形成,維持した被控訴人の措置は,…雇用関係についての私法秩序に反する違法な行為」である等と判示しています。ただ、コース別人事制度がなくなったわけではなく、厚生労働省は、コース別人事制度が均等法に違反しないための留意事項を公表しています(「コース別雇用管理の留意点」)。

(3) 私の体験談を少々披露しますと…(正直、四半世紀昔の話になりますので、誤りがあるかもしれません…。)
 私は、一般職として、入行しました。女性総合職は、同期で3人の狭き門。もちろん、総合職を志望して面接を受けましたが、「我が行は、女性活用の実績がある。一般職で入行しても、能力を生かせる仕事があるし、転換試験も用意されている。」等と説得されました。
 私が配属された審査部には、前年より四大卒の女性が配属されておりましたが、私の班(シマ)には女性がおらず、副参事役の男性が私の指導担当となりました。
 入行初日、財務分析の本をどさっと渡されて、「勉強してね。」といわれたのですが、翌日出社すると、何となく、雰囲気がおかしい…。
 後で聞いたのですが、一般職の女性から私の指導について、不満の声があがったとか…。そして、私の指導担当には、入行20年近くのベテラン一般職(女性)もつくことになりました。
 当時、そもそも、朝シマの机を雑巾で拭くこと、午後三時に審査部40名ほどの行員にお茶をいれること(マイ湯呑があって、覚えるのが大変)、来客があるとお茶をおだしすることなどは、女性のみの仕事でした。
 若干気になったのは、指導担当の女性が、私のために、わざわざ仕事をつくってくれること(仕事を覚えさせようという好意でしょう…)。
 実に、半年間ほど、給湯室、コピー室等、フロア中のお掃除をしてまわりました。お布巾やお湯呑みを定期的に漂白剤で消毒できて、気持ちよかったです(笑)。
 行内向けのハンドブック6000冊ほどの印刷を行内の印刷室に頼むとき、「ホッチキス留めは私たちでしましょうね」(もちろん、印刷室でホッチキス留めまででできます。)と宣言され、本店の印刷室に印刷物をとりにいき(こちらも行内便で運んでもらえます。)、台車に積んで、審査部の入っていた雑居ビルまで運ぶことに…。大手町の横断歩道で、台車から印刷物が滑り落ち、半べそをかきながら台車に積みなおしたのも、今となっては、良い思い出でしょうか…。
 思うに、審査部時代、焦りも手伝って必死に勉強したのは、かけがえのない財産になっています。
 入行後、お掃除ばかりしていたわけではなく、以前ブログで触れましたように、コンピュータの研修をうけたり、財務分析の勉強をしたり、あと、審査部と調査部の新人総合職・一般職で、様々な取引先(製鉄、自動車、食品等)を会社訪問させていただいたりもしました。そして、なんといっても、財務分析システムの開発に主担当として携わらせてもらったのは、良い経験になりました。その後、証券アナリストの資格をとれたのは、審査部時代の経験が大きく寄与しています(退職してから何年かたっていても、簿記2級は比較的容易にとれましたし…。)
 転換試験にも挑戦しました。国際部門にいた頃です。
 その際、匿名の嫌がらせの手紙をうけとったのには、本当に驚きました。文体から見て、差出主は女性だと思われます。転換試験を受けるのには、上司の推薦が必要ですが、手紙の差出主は、転換試験を受けられない事情でもあったのでしょうか。もっとも、転換試験の結果は、その差出主の杞憂に終わりました…(転換試験に落ちました…笑)。
 銀行時代、自分の思い通りにいかないことがあるということを、頭でだけでなく、心で、知りました。ついつい、やれることは一生懸命努力して、思い通りの結果にならなければ、諦める…ということが身につきました。よかったのか、悪かったのか…。就職試験の「あの日」まで戻って別の人生を歩んでみることはできないので、なんとも評価のしようがありませんが、怠け者の私のことですから、銀行時代を経ていなければ、弁護士にはなっていなかったことでしょう(司法試験の勉強をはじめたのは、銀行をやめてからですが…)。

2015年8月7日金曜日

東芝の不正会計とライブドア事件 ~その2~


1. 前回のブログで、東芝不正会計についての報告書について、少々ご紹介しました(↓)。
 http://hisaya-avenue.blogspot.jp/2015/08/1.html
 今日は、ライブドア事件の感想について、述べてみたいなと思います。
 
2.ライブドア事件の感想

(1) ライブドア事件は、当時、マスコミを、大層、賑わせていましたね。
 なので、当初の逮捕容疑が「風説の流布」であることくらいは記憶に残っていました。
 でも、「弁護士が分析する企業不祥事の原因と対策」(新日本法規、
2012年)で、偶々、ライブドア事件を担当することになり、当時の新聞記事だけでなく、刑事事件・民事事件の判決や関連書籍を読んだりして、改めて、こんな事件だったんだとびっくりしました。

(2) 事件の推移
 株式会社ライブドア(平成8年有限会社オン・ザ・エッジとして設立。平成16年2月に商号変更。以下、「ライブドア」といいます。)事件の端緒は、ご記憶の方が多いとは思いますが、平成18年1月16日(月)の東京地検特捜部及び証券取引等監視委員会による強制捜査の着手でした。その後、ライブドアの代表取締役らの逮捕へとつながり、マスコミでは、当初の逮捕容疑である偽計と風説の流布のみならず、経常利益等粉飾の事実等についても、それはそれは、大きく報道されました。
 東京地検による強制捜査は、俗に「ライブドア・ショック」と言われるような形で、日本の株式市場に大きな影響を与えたのも、ご高承の通り…。
 ライブドア自体の株価についても、強制捜査により急落し、平成18年1月24日まで6営業日連続でのストップ安となり、僅か1週間で、75パーセントも暴落しました。
 そして、東証は、ライブドア株式及びライブドアマーケティング株式について、同年同月21日に開示注意銘柄に指定、同年同月23日には監理ポストに割り当て、さらに、同年3月13日には、同年4月14日の上場廃止と同年3月14日からの整理ポスト割り当てを決定…という何とも素早い対応となりました。
 事件後、ライブドアは、その保有する事業子会社を次々に売却し、平成23年8月5日には解散し、清算手続へ移行という末路をたどりました。なお、平成23年3月期の同社有価証券報告書によれば、個人株主及び機関投資家を原告とする損害賠償請求訴訟の結果によっては、122億5千万円及びこれに付帯する遅延損害金の支払いが発生する可能性があるとされていますが、同期末のライブドアの総資産は、なんと、約300億円となっています。

(3) 堀江氏の刑事事件で認定された事実
 強制捜査開始時、ライブドアの代表取締役社長兼最高経営責任者であった堀江氏は、東京地裁にて懲役2年6月の実刑判決を言い渡され(東地判平19.3.16)、東京高裁では、その控訴が棄却され(東高判平成20年7月25日)、最高裁も、平成23年4月25日に上告を棄却、これに対する異議申立ても斥けられたため、第一審東京地裁で言い渡された実刑判決が確定しました。
 もっとも…。これは、個人的感想なのですが、堀江氏に係るとても長い刑事事件の判決を読んだ限りでは、う~んていう感じなのです。証人尋問等、実際の証拠に接したわけではないので、極めて限定的な資料にしか触れていないわけですが…。
 刑事裁判で認定された犯罪事実は、以下の通り…。

①東証が提供するTDnet(Timely Disclosure networkの略で、適時開示情報伝達システムのこと。)によって、(a)株式交換及び(b)子会社の四半期業績に関し、虚偽の事実を公表し、もって、子会社株式の売買のため及び同株式の相場の変動を図る目的をもって、偽計を用いるとともに、風説を流布した(風説の流布及び偽計使用の罪にあたります。以下、「第1事案」といいます。)

及び

②ライブドアの平成16年9月期において、約3億円の経常損失が発生していたにもかかわらず、(a)売上計上の認められないライブドア株式売却益、及び、(b)架空売上げを売上高に含めるなどして経常利益を約50億円として記載した内容虚偽の連結損益計算書を掲載した有価証券報告書を提出した(虚偽有価証券報告書提出の罪にあたります。以下、「第2事案」といいます。)

(4)  まず、第1事案について。
 第1事案は、(a)株式会社マネーライフ社(以下「マネーライフ社」といいます。)を株式交換によって買収した際のTDnetでの平成16年10月25日付公表にかかわるものと、(b)ライブドアマーケティングの平成16年12月期第3四半期業績に関するTDnetでの平成16年11月12日付公表にかかわるものがあります。
 特に、前者(
a)について…。
 ライブドアマーケティングがマネーライフ社を株式交換によって買収する際、
TDnetにより、
「株式交換比率(
1対1)については、第三者機関が算出した結果を踏まえ両社間で協議の上決定した」
旨、公表した(なお、上記株式交換比率については、後日、ライブドアマーケティング株式の
100分割に伴い、100(ライブドアマーケティング)対1(マネーライフ社)に訂正。)のですが、
虚偽であるとされたのは、

ⅰ)株式交換比率を1対1とする部分、
及び、
ⅱ)同株式交換比率は第三者機関が算出した結果を踏まえて決定したという部分
です。
すなわち、
ⅰ)につき虚偽であるとされたのは、ライブドアがマネーライフ社のデューディリジェンスを実施する際、マネーライフ社の企業価値を実際は約1億円程度と評価していたにもかかわらず、同社の企業価値とは無関係な合併手数料等を上乗せする等してこれを4億円とし、その上乗せした価格を前提にして、上記株式交換比率を決めているからであり、
また、
ⅱ)につき虚偽であるとされたのは、第三者機関とされる上記株式交換比率算定に係る報告書を作成した会社は、ライブドアファイナンス従業員により作成、提出された同報告書を、形式面の確認をしたのみで、算定内容の正当性等については一切検討することなく、その代表取締役及び所属公認会計士の各印を押印しているので、同報告書の実質的な作成者はライブドアファイナンス従業員であるといえるから…というのです。
 特に、ⅱ)の認定には、第三者機関を経たこと自体は事実であり、そこで実質的な判断が行われなかったとしても、それは第三者機関側の責任ではないか等の批判があります(高山佳奈子「ライブドア事件控訴審判決」判例時報2048・171。弥永真生「風説流布・偽計使用と虚偽有価証券報告書提出―ライブドア刑事事件」(ジュリスト1414・243)。 

(5)  第2事案は、ライブドアにおいて、平成15年10月1日から平成16年9月30日までの連結会計年度につき、経常損失が3億円ほど発生していたにもかかわらず、売上計上の認められない(a)ライブドア株式売却益約37億円、及び、(b)株式会社ロイヤル信販及び株式会社キューズ・ネットに対する架空売上げ約15億円を、それぞれ売上高に含めるなどして経常利益を約50億円として記載した内容虚偽の連結損益計算書を掲載した有価証券報告書を、財務省関東財務局長に対し提出したというものです。
 これについては、特に、(a)が…。
 (a)のライブドア株式売却益が売上計上を認められないとされた理由は、以下のとおりです(この「自己株式売却益還流スキーム」のうち、クラサワコミュニケーションズ株式会社に係るスキームの概要については、別図をご参照ください。なお、別図の(注)で説明しているように、実際には、貸株も利用されています。)
 ライブドアの子会社である株式会社ライブドアファイナンスは、平成16年9月期において、ライブドアが行ったクラサワコミュニケーションズ株式会社およびウェッブキャッシング・ドットコム株式会社との株式交換を利用してM&Aチャレンジャー1号投資事業組合が取得したライブドア株式の売却益を、EFC投資事業組合等の複数の投資事業組合(以下、あわせて「本件各組合」といいます。)を経由して受領し、合計約37億円を売上計上し、同年9月期のライブドアの連結決算においても、同額を連結売上として計上しました。しかし、本件各組合はいずれも、ライブドアファイナンスが会計処理を潜脱する目的、いわば脱法目的で組成した組合だから、そのように一定の独立性が認められている組合を悪用してなされた取引においては、当該組合の存在を否定すべきである(!)というのです…。
 ところで、虚偽有価証券報告書罪において、虚偽記載か否かは、当時の会計基準に照らして判断されるべきとされています(長銀事件最高裁判決(最判平20.7.18判時2019・10)参照)。そこで、ここでは、本来、少々難しい会計の話が出てくるはずです。すなわち、投資事業組合を連結対象とするか否か。そして、ライブドア事件当時、投資事業組合を連結対象とするかについて、明確なルールは存在しなかったといいます(平成18年9月8日に公表された企業会計基準委員会実務対応報告第20号「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」が、これを明確化したといいます。)(前掲高山・171、弥永・244)。
 もっとも…。裁判所は、投資事業組合を連結対象とするか否かの会計基準について、正面から検討していません。各組合を脱法目的であるとしてその存在を否定し、ライブドアファイナンスがライブドア株式を売却したものとみなしているのです。
 そして、連結子会社による親会社株式の処分差益の計上方法については、会計基準上、損益勘定ではなく資本勘定(連結貸借対照表の資本の部の「その他資本剰余金」)となることが、明らかです(企業会計基準第
1号「自己株式及び法定準備金の取り崩し等に関する会計基準」)。なので、ライブドアファイナンスがライブドア株式を売却したものとみなされるのであれば、ライブドア株式売却益約37億円は、これをライブドアの連結損益計算上、売上げとして計上することは許されないことになります。
  私が一番びっくりしてしたのは、この各組合の存在を否定したところでしょうか…。そうか、刑事事件は、極めて規範的な判断をするんだった…と思いました。
 罪刑法定主義と租税法律主義。似た印象を受けますが、租税法の分野では、「納税者の表示とは異なる真実の事実関係や法律効果に基づいて課税することが認められるのは、当該法律関係に係る意思表示が民法上の通謀虚偽表示であると認定されるといった極めて例外的な場合に過ぎない」とされています(中里実「租税法における事実認定と租税回避否認」『租税法の基本問題』(有斐閣)・
131。なお、東京高判平22.5.27にも、概ね同旨の判示があります。)
 本件では、各組合に係る組合契約は私法上有効に存在していると思われる(私法上、不存在とはいえないし、通謀虚偽表示も成立しないと思われます。)のに、何故に、刑法上、会計処理を潜脱する目的(この認定にも議論の余地があるとも思われる)で設立された組合は存在しないとみなされるのでしょうか…。「正常な経済活動の一環として有価証券投資を行う場合であっても複数の組合を用いる仕組みが採用されることは稀ではない」(大杉「ライブドア事件判決の検討(下)」商事法務1811・15)ことを勘案すれば、より深い検討を要するのではないだろうか…と思ってしまうのです(前掲高山・171に同旨の記載あります。)。
 
別図 ライブドア事件
クラサワコミュニケーションズ㈱に係る
自己株式売却益還流スキーム 

 (6)  冒頭の「弁護士が分析する企業不祥事の原因と対策」(新日本法規、2012年)では、コンプライアンス上のポイントとして、「会計基準、会計処理の重要性を認識し、公認会計士等の専門家のアドバイスを尊重する。」旨、指摘しました…。
 また、「有価証券報告書虚偽記載等の不実開示には、刑事罰、課徴金(行政措置)、証券取引所による制裁、民事責任(証券訴訟等)、社会的制裁等のリスクが存する。特に、巨額の損害賠償を負う恐れのある証券訴訟には、要注意である。」とも…。

3. 最近…

  ライブドア事件は国策捜査だ…というような指摘がありますね。脱稿後、堀江氏や宮内氏といった事件当事者の本も読んだりしましたが、事件の背後については、私ごときでは、わかりません。でも、検察に見込み違いがあったことは、想像に難くないようにも思われます。もし、見込み違いがあったとすると…。う~ん…。強制捜査等の影響はあまりに甚大だったのではないかと思うのですが…。
 ただ、今年になって、堀江氏の自伝(『我が闘争』)を読んだら、ずっと感じていた義憤のようなものが雲散霧消しそうになりました…。そこが、堀江氏の凄さかな…(苦笑)。最近、テレビにもよくでてらっしゃるので、楽しく拝見しています。