2018年7月31日火曜日

思い出の事件簿 ~不在者の帰還~


1. 今年の夏の暑さは、一入ですね。西日本豪雨や逆走台風など、異常気象の被害にあわれた方には胸が痛みます。心よりお見舞い申し上げます。

2. (1) 以前、失踪宣告取消の審判申立をしたことがあると、このブログで触れました。
http://hisaya-avenue.blogspot.com/2015/05/blog-post_26.html
 実は、不在者管理人をしていて、当該不在者がみつかり、その財産を引き継いだ、という経験もあります。
 不在者財産管理制度については、こちら(↓)。
http://hisaya-avenue.blogspot.com/2017/04/blog-post.html

(2) 不在者さんがみつかった経緯は…。
 実は、不在者さんは居所不定になって公園などで寝泊まりしていたところ、いわゆる「生活保護ビジネス」の業者の方に声をかけられ、生活保護申請をしました。その結果、当該不在者自身が知らないうちに相続していた不動産を管理する私のところに固定資産税の減免決定通知が届き、ビックリ…という展開です。
 ところが、私がその経緯を確認しているうちに、不在者さんは、再び、行方がわからなくなってしまいました。そこで、区役所の方に、もし、不在者さんが再び現れたら、連絡してほしいと頼んでおいたところ、その不在者さんは再び同じ業者に声をかけられ、生活保護を申請したのです。区役所から連絡を受けた私は、早速、不在者財産管理人選任申立をしたご親戚に声をかけ、ご一緒に区役所に向かい、無事、不在者さん本人であることを確認しました。

(3) 実は、その後、不在者さんに財産を引き継ぐには、少々、苦労しました。
 家裁からは、不在者さんにまず居所を定めるよう指示されたのですが、これって意外に難しいんですね。不在者さんは、生活保護申請できないとわかって業者の寮からでざるをえず、私もない知恵を絞ろうとしたのですが、不在者さんはなかなか居所を定めることができませんでした。不在者さんは携帯電話を持っていないので、こちらから不在者さんに連絡をとることはできず、不在者さんが約束した日時に事務所にこられないと、このまま連絡がとれなくなったらどうしよう…と、こちらが途方に暮れてしまいます。

(4) 本件でよかったと思ったのは、初動で不在者さんの預金口座を調べておいたことです。本件は遺産分割協議を契機に不在者財産管理人が選任されたのですが、当初、不在者さんの財産は不明でした。でも、不在者さん以外の共同相続人間における遺産分割協議に時間がかかったこともあり、不在者財産管理人就任後、念のため、不在者さんの生誕から居所不明になるまでの住所地近辺の金融機関に対して不在者さんの預金口座の照会をおこなったところ、不在者さん名義の預金口座をみつけることができました。
 遺産分割協議後、不在者財産管理人名義の預金口座も開設しましたが、不在者さん名義の口座では、居所不明後に数回、同日に同金額の入出金があったため、不在者さんの生存の可能性が細いながらもあることを示していたのです。
 不在者管理人は、いつまで、不在者の財産を管理するのか?実際には、失踪宣告がなされるまでということが結構多いのではないかと思います。本件でも、家裁から失踪宣告を打診されましたが、上記不在者さんの預金口座の入出金を理由に失踪宣告を見送っていました。
 そして、不在者さんの1回目の生活保護申請と2回目の生活保護申請の間は結構あいたので、固定資産税を支払うだけの流動性資産が足りなくなり、家裁の権限外許可を受けて、不動産を売却しておりました。
 不在者さんが本人であることは確認できていること、不在者さんは不在者名義の預金口座の通帳とキャッシュカードを保有していたこと、不在者さんは名古屋を離れた後に居所を定めたいと話しており、その前に財産の引継ぎを望んでいたこと等から、家裁とも相談し、不在者さんに無事に不動産の売却代金を引き継いだ上、「管理終了報告書」を家裁に提出し、不在者財産管理人選任処分は取消され、本件は終了しました。