2021年1月1日金曜日

願 疫病退散

 

令和3年お正月。
今年は、コロナ禍が収まり、平安安寧な日常が戻ってきますように…。



丑年に因んで七尾天神に初詣で


2020年12月25日金曜日

大変な一年でした…

 

1. 今年も残すところあと僅か…。
 今年を振り返ると、やはり、コロナですね…。経済、生活様式等に本当に大きな影響を与えました。冬の訪れとともに、恐れていた第三波が到来し、GoToトラベルは全国的に一時停止となり、感染力が強いという変異種の情報も飛び込んできました…。日本国内でのワクチン使用に向けた承認申請など前向きな情報もありますが、なかなか先行きが見えない状態に心が塞がれる思いがします。
 戦争を経験しているような人生の大先輩数人からは、「長いこと生きてきたけどこんなことは初めて…」との感想を聞くことも…。
 とはいえ、「アマビエ」が話題になったように、これまで、人類は、疫病と闘ってきたのかもしれません。
 現在のところ、コロナ禍に対しては感染予防を心がけるくらいしか私にできることはなく、どうか早く収束しますようにと、心より、心より、お祈りするばかりです。

 

2.袴田事件
 袴田事件の第2次再審請求特別抗告審で、最高裁第3小法廷が、再審開始を認めなかった東京高裁決定を取り消し、同高裁に差し戻す決定をした(最決令和21222日)との報道に接しました。
 袴田事件について、詳しいわけではないのですが、死刑を宣告した一審判決にかかわった元裁判官の合議の秘密を破る発言も相俟って、なかなか扉が開かない再審の行方には注目しておりました。その元裁判官も先月亡くなられたようですが…。
 上記決定は、ざっとしか拝見していませんが、やはり、林景一裁判官、宇賀克也裁判官の反対意見は、心に残りました。
 「多数意見は、原決定を取消すという限りでは、私たちの考え方と方向性を同じくするところがある。しかしながら、私たちは、多数意見を一歩進めて、みそ漬け実験報告書は、確定判決の有罪認定に合理的な疑いを生じさせる新証拠であり、また、多数意見と異なり、B鑑定についても、再審を開始すべき合理的な疑いを生じさせる新証拠であると考える。そして、私たちは、確定審におけるその他の証拠をも総合して再審を開始するとした原々決定は、その根幹部分と結論において是認できると考える。このような理由から、単にメイラード反応の影響等について審理するためだけに原裁判所に差し戻して更に時間をかけることになる多数意見には反対せざるを得ないのである。」
 この反対意見にでてくるように、今日における刑事訴訟における証明の程度は、「合理的疑いを超える(beyond a reasonable doubt)」証明が必要だとされます。伝統的に用いられてきた「高度の蓋然性」基準が肯定的評価を積み重ねていくアプローチであるのに対し、「合理的疑いを超える」証明基準は否定的評価を消去していくアプローチであるとされます(田口守一『刑事訴訟法』)。

3.今日は、クリスマスデイ。
I wish you all a Mary Christmas !

今年のツリー

気をつけながらのイブの食卓

2020年11月8日日曜日

外れ馬券事件 ~高松事案控訴審判決の報に接して~

1. 11月に入りましたが、名古屋は、本日、小春日和です。

久屋大通公園の木々が色づき
芝生には落ち葉がいっぱいです。

 

2.外れ馬券事件 ~高松事案の控訴審判決の報に接して~

(1) 数日前、大量に馬券を購入していた高松市の男性が、(当たり馬券だけでなく)外れ馬券の購入費用も必要経費として所得を計算するよう求めていた訴訟の控訴審で、東京高裁が、令和2114日、(通常馬券分について)外れ馬券の購入費用を必要経費と認め課税処分の一部を取消していた第一審判決(東京地判令和元年1030日)を取り消し、課税処分は適法であるとして国の逆転勝訴となったというインターネットの新聞記事を目にしました。

(2) 外れ馬券事件については、このブログでも何回かとりあげたことがあります。
<大阪事案>
<札幌事案>
 このブログではとりあげていませんが、他にも、東京事案(東高判平成28年9月29日)や横浜事案(東高判平成29年9月28日)などがあります。
 一昨日には、租税判例研究会があったのですが、たまたま、上記記事の高松事案控訴審判決の原審である東京地判令和元年
114日が題材でした。
 また、昨日、大学院で2年生がいくつかのグループにわかれて中間発表会があったのですが、私のグループには、外れ馬券事件をテーマにした方が複数いらっしゃいました。

  それにしても、同様の争点でこうも判決が続くのは、世にいかに競馬愛好家が多いかを反映しているのでしょうか。

(3)  リーディングケースとなるのは、やはり、大阪事案の上告審判決(最判平成27310、以下、「平成27年判決」。)となります。大阪事案は、馬券を自動的に購入できるソフトを使用してインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を上げていたXが正当な理由なく確定申告書を期限までに提出しなかったという所得税法違反の事案(刑事事件)です。
 争点は、①当たり馬券の払戻金が所得税法上の一時所得に当たるか雑所得に当たるか、②外れ馬券の購入費用を含めた全馬券の購入費用を控除できるかです(ここでは詳しく述べませんが、①において「一時所得」でなく「雑所得」となった方が、②で外れ馬券の購入費用まで「必要経費」として控除を認められやすいことになります。)。
 平成27年判決では、最高裁が、はじめて、所得税法341項「営利を目的とする継続的行為」をどのように判断するかを示しました。すなわち、「所得税法上,営利を目的とする継続的行為から生じた所得は,一時所得ではなく雑所得に区分されるところ,営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは,文理に照らし,行為の期間,回数,頻度その他の態様利益発生の規模,期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である」と判示したのです(ここが、前回10月のブログで触れた規範を定立している部分ですね。)。
 この規範部分をみると、「営利を目的とする」(営利目的該当性)「継続的行為」(継続的行為該当性)をわけることなく、総合考慮の考慮要素として、行為の態様(期間、回数、頻度等)利益発生状況(規模、期間等)を挙げています。この点、最高裁判例解説(楡井英夫)は、「継続的行為」という文言に照らせば、行為の態様(期間、回数、頻度等)が考慮要素になるのは当然のことと思われる一方で、「営利を目的とする(行為)」については、主観的動機を有するだけでは足りず、かといって、客観的にみて利益が上がる行為に限定すると過度の限定となるから、客観的にみて利益が上がると期待し得る行為であればよい、としています。
 そして、平成
27年判決のあてはめ部分は、継続的行為該当性と営利目的該当性をわけずになされています。

(4)  次の札幌事案では、同種の争点で争われた民事事件ですが、X(納税者)は、大阪事案と異なり、馬券を自動的に購入できるソフトは使用していませんでした。一審判決は、Y(国)勝訴(一時所得に区分。外れ馬券の購入代金は控除不可。)、控訴審はX勝訴(雑所得に区分、外れ馬券も控除可。)。そして、最高裁がYの上告を棄却する判決をしたのが、最判平成291215(「平成29年判決」)です。平成29年判決には、理由もついていて、最高裁判例解説(三宅知三郎)もあります。
 規範部分をみると、平成29年判決では、平成27年判決を引用し、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは,文理に照らし,行為の期間,回数,頻度その他の態様,利益発生の規模,期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である」と判示しています。このように、平成27年判決と平成29年判決の規範部分は、まったく一緒です。
 もっとも、そのあてはめ部分は、平成27年判決と異なり、「継続的行為といえる」かと、「客観的にみて営利を目的とする」かを、はっきりとわけて検討しています。この点について、最高裁判例解説は、「このような検討ができることについては平成27年最判の調査官解説においても既に示唆されていたところであり、本判決が平成27年最判と異なる判断枠組みを用いたものとは解されない。」と記しています。
 ところで、平成29年判決の営利目的該当性で具体的に検討されているのは、利益発生の規模、期間であり(「上記のような馬券購入の態様に加え」という文言は入っています)、しかも、「客観的にみて営利を目的とするものであった」という結論をだすのに、「Xは回収率が総体として100%を超えるように馬券を選別して購入し続けてきたといえる」という評価が入っています。この点について、最高裁判例解説は、「回収率が総体として100%を超えるようにXが選別して馬券を購入し続けたと評価できる以上、そのような行為客観的にみて利益が上がるものと期待することができる」とし、また、「本判決は、回収率が100%を超えるようにXが馬券を選別して購入し続けてきたと評価するに当たってXの馬券購入態様を根拠の一つとしている」とも記されています。
 この回収率が100%を超えるという評価部分は、平成30629日付で一部改正された所得税基本通達34-1(2)の注1にしっかりと取り入れられています。
 さて、ここで問題となるのが、そうはいっても、回収率が100%を超えるという評価は、事後的にしかできないのではないかということ。平成29年判決や最高裁判例解説をみると行為態様も勘案しているとあり、実際、そうでしょうが、考慮要素の「行為態様」にも「利益発生状況」にも、「期間」が入っていて、そのような行為が相当期間において回収率100%を超えてはじめて、「客観的にみて利益が上がるもの期待」できるといえるのであれば、営利目的該当性は、事後的、しかも、相当期間経過後(平成29年判決では6年間)にしか判断できなくなってしまうようにもみえます。もしそうだとすると、申告時には所得分類がはっきりしないケースがでてくるのではないかという危惧をぬぐいきれないように思います。
 また、次に述べる高松事案のように、複数年のうち、1年でも回収率が100%を下回ると、営利目的該当性は否定されてしまうのだろうかという疑問が生じます。

(5)  冒頭の高松事案の控訴審判決(東高判令和2114日)の判決文は入手できていません。
 原審の東地判令和元年1030日についてみてみると、規範部分は、平成27年判決、平成29年判決を引用していて、まったく同じです。
 原審で特徴的だったのは、通常馬券的中による払戻金とWIN5に係る馬券の的中による払戻にわけて検討し、前者は雑所得(Y(国)の一部敗訴)、後者は一時所得と判示した点でしょう(このように馬券の種類によりわけて検討する手法も、議論の対象になるところでしょう。)。
 そして、控訴審では、おそらく、通常馬券に係るY敗訴部分が取消されたものと思われます。というのも、この事案で処分の対象となったのは、平成24年から平成26までの所得なのですが、通常馬券購入に係る損益は、平成24年には約790万円の損失がでていたのです。原審は、営利目的該当性のあてはめ部分で、「Xは,平成22年以降の5年間のうち4年間で,年間を通して利益を上げており,その金額は約516万円(平成25年)から約1376万円(平成23年)に及ぶのであり,平成24年に約790万円の損失が生じているものの同年の回収率は中央競馬の平成24事業年度の払戻率(馬券の発売金額に対する払戻金額の割合。約75%)を相当程度超える86.4%を維持しているのであるから,上記のような馬券の購入行為の態様,利益発生の規模,期間その他の状況等によれば,Xは回収率が総体として100%を超えることが期待し得る独自のノウハウに基づき馬券を選別して購入を続けていたということができ,そのような原告の上記の一連の行為は,客観的にみて営利を目的とするものであったといえる」と判示しました。4年間のうち1年くらい100%を下回っても(その年度の平均払戻率は超えているし)、総体としては100%を超えることが期待し得る購入だったといえるよ、というわけです。この点が、控訴審で変更されたようで、インターネットの新聞記事によれば、件の24年は約790万円の損失を計上しており、「恒常的に利益を上げていたとまでは認められない」として営利目的該当性を否定したようです。
 こうしてみてくると、平成29年判決は、平成27年判決と異ならない判断枠組みであるとしながら、営利目的該当性について、客観的にみて利益が上がると期待し得ると評価するには回収率が100%を超える必要があると示したようにみえるため、これでは、客観的にみて利益が上がる行為に限定」したようなものであり、租税法規の行為規範性や予測可能性、法的安定性などの観点から、問題が生じているように思われます。

2020年10月26日月曜日

法的三段論法と違憲の主張、法人税法34条2項「不相当に高額」とその委任を受けた令70条

1. 10月もあと数日。秋が深まってきました。
 ヨーロッパでは第2波が深刻なようです。日本では、これから冬を迎えますが、どうなっていくのでしょうか。いずれにしても、スッキリとした終息の見通しは、たたないと言わざるを得ません。今年に入ってから大きく価値観がかわり、すべてではないにせよ、それが定着していくように思われます。
 マスクをしていなくても気兼ねしなくてすむような日は、果たして、くるのでしょうか。

事務所近くの久屋大通公園がリニューアルして
芝生になりました。


芝生でくつろぐにはよい季節で
夜もきれいです。


 

2.法的三段論法と違憲の主張 

(1)  最近、なかなかブログを更新できていませんが、常日頃考えていることの一つを、アップしてみます。

(2) 大学院で教えていて気付いたことの一つに、法的三段論法を意識するというのがあります。
 これは、自ら振り返ると、あまり教えられた記憶がありません。もしかしたら、法学を勉強していると、自然と身につく側面があるのかもしれませんね。 

(3)  判決文を読むときでいえば、規範定立部分とあてはめ部分を意識することが大切です(木山泰嗣先生の『税務案例がよめるようになる』にもそのような記載があります。)。法的三段論法では、事実に法規範(条文)をあてはめて結論を導きます。でも法学の対象となるような事案では、条文をそのまま当該事実にあてはめて結論を得ることが出来ないので、解釈が必要になり、裁判所が規範を定立したりします。この規範を定立している部分が、まずは、重要です。もし、その後、同じような争点で訴訟に発展したとき、この規範により結論が導かれると予想されますからね。

(4)  著名な武富士事件を例にすると…。
 租税判例の多くは、納税者(原告X)が課税処分の取消を求めて争います。課税処分を取消してもらうためには、課税処分が違法であることが必要です。そして、課税処分が課税要件を欠いていると主張立証できれば、当該課税処分は違法であるといえるでしょう。
 武富士事件では、贈与税決定処分等の取消を求めたものです。
 Xは、贈与を受けた当時、香港に赴任していたものの、日本国内の滞在日数もそれなりにありました(香港約65.8%、国内約26.2%です。それだけでなく、この滞在日数は、公認会計士から贈与に関する具体的な提案を受け、租税回避目的で調整した結果でした。)。ところが、当時の相続税法では、受贈者が贈与を受けたときに、国内に「住所」を有することが、課税要件となっていました。そこで、贈与税決定処分等が取消されるか否かは、
Xの「住所」が日本にあるか否かによることとなったわけです。
 Xのように、香港と日本を行き来している者の「住所」は、どのように判断すればよいでしょうか。相続税法の条文は、「住所」と記載するのみで、その定義規定は用意されていませんでした。
 最高裁(平成23218日判決)は、「ここにいう住所とは、反対の解釈をすべき特段の事由はない以上、生活の本拠、すなわち、その者の生活に最も関係の深い一般的生活、全生活の中心を指すものであり、一定の場所がある者の住所であるか否かは、客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かにより決すべきものと解するのが相当である」と判示しています。このように、最高裁が、「住所」をどのように判断するか述べている部分が、規範を定立しているところです。最高裁が、「『住所』はこのように判断する」といってるのですから、もし、その後、「住所」が争点となる同種事案が生じれば、この規範に基づき、「住所」がどこにあるか判断されるのではないかという予想がたちます(武富士事件のような租税回避事案については、これを封じるための法改正がありましたが…)。
 規範定立部分に続く「これを本件についてみるに、前記事実関係等によれば、…」というところは、この規範に事実をあてはめている部分です。このあてはめ部分も、どういう事実だと、その規範にあてはめてどのような結論がでるのかということがわかりますから、勿論、重要です。

(5)  租税判例では、納税者から違憲の主張がでることもあります。
 例えば、このブログでもとりあげたことのある残波事件(第一審は東地判平成28422日)
 残波事件は、X社が、その役員4名に支給した役員報酬(役員給与)とその代表取締役を退任した者に支給した退職給与について、「不相当に高額な部分の金額」があるとしてなされた本件各更正処分等の取消を求めたものです。
 この事案において、
X社は、「本件各更正処分等は、憲法84条に反するものである」という主張もだしていました。
 前述のように、課税処分を取消してもらうためには、課税処分が違法であることが必要です。この点、もし、その処分に適用された大前提たる条文が憲法に違反していたら、当該条文は原則として無効となりますから、課税処分も違法といえるでしょう。
 私は、違憲の主張は、ゼロの割り算に似てるな…などと思ってしまいます(変ですかね…)。

(6)  ところで、法人税法342項の「不相当に高額」については、私が以前書いた論文「租税訴訟における規範的要件の要件事実 -法人税法1321項の不当性要件を中心に-」で指摘だけした疑問点(「税法学」58284頁脚注7)があります。長くなりますが、以下に、敷衍してみたいと思います。

(7) 残波事件で問題となった法人税法342項は、以下の通り、規定します(太字下線筆者)。

内国法人がその役員に対して支給する給与(…略…)の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。


 「不相当に高額」といわれても、当該法人の給与が具体的にいくらを超えるとそうなるか、俄には、わかりませんね。

 「不相当に高額」は、講学上、不確定概念といわれています。

 昨年、私が上記論文で書いた同族会社行為計算否認規定(法人税法1321項)の「不当に」という要件も、不確定概念であるといわれています。
 不確定概念は、憲法84条の租税法律主義から導かれる課税要件明確主義に反しないかが問題となりますが、金子先生は、不確定概念を用いることは、ある程度は不可避であり、また必要であるとしていますね。
 もっとも、法人税法1321項と違って、法人税法342項は、「不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額」としているように、「不相当に高額な部分の金額」をどのように判断するかについて、法人税法施行令第70条に委任しています。
 この点、会社法改正に伴う平成18年法人税法改正の前の事案ですが、丸中縫工事件の最高裁(平成9325日判決)は、「法人税法341項の規定の趣旨、目的及び法人税法施行令691号の規定内容に照らせば、法人税法341項所定の『不相当に高額な部分の金額』の概念が、不明確で漠然としているということはできない」と判示しています。
 

(7) それでは、現行の法人税法342項の委任を受けた法人税法施行令第70条はどのように規定しているのでしょうか。
 令70条1号イ(いわゆる実質基準)は以下のように規定します。

(過大な役員給与の額)

70条 法第34条第2項(役員給与の損金不算入)に規定する政令で定める金額は、次に掲げる金額の合計額とする。

一 次に掲げる金額のうちいずれか多い金額

イ 内国法人が各事業年度においてその役員に対して支給した給与(法第342項に規定する給与のうち、退職給与以外のものをいう。以下この号において同じ。)の額(第三号に掲げる金額に相当する金額を除く。)が、当該役員の職務の内容、その内国法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況等に照らし、当該役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額(その役員の数が二以上である場合には、これらの役員に係る当該超える部分の金額の合計額)

(以下、省略)


このように

法人税法
342項「不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額」
   ↓
法人税法施行令第701イ「当該役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合」

と言い換えられています。

 このように、「不相当に高額な部分の金額」を「相当であると認められる金額を超える」と言い換えて規定したことには疑問が生じないわけでもありません(法人税法施行令第702の「その退職した役員に対する退職給与として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額」も同じ議論になります)。
 というのも、「不相当に高額」というのは、「高額」であるだけでは足りず、「不相当に」「高額」である必要があるようにも、思えるからです。これって法律による委任の範囲を超えていないのでしょうか…?
 この点、丸中縫工事件の第一審(名古屋地判平成6615日)は、Xの法人税法341項は憲法84条の課税要件明確主義に反するという主張や合憲限定解釈が必要であるという主張をしりぞけた上で、「令691号に規定される『相当であると認められる金額を超える部分の金額』については、当該役員の職務の内容当該法人の収益及び使用人に対する給料の支給の状況同業種・類似規模の法人の役員報酬の支給の状況等に照らして定まる客観的相当額ある役員の役務の対価として相当と認められる金額は一定額に限られるものではないから、ここにいう額は、その性質上、相当と認められる金額中の最高額を意味することになる。)を超える部分の金額が、これに当たるというべきである」と判示しています。
 このように、相当と認められる金額中の最高額を超える金額は、不相当に高額な部分の金額であると解釈すれば、法律による委任の範囲を超えないでしょうかね…。
 Xの合憲限定解釈の主張は、「法341項の『不相当に高額な部分の金額』は『明白かつ著しく高額な金額』と解釈されるべきである」というものなのですが、「明白かつ著しく」とまではいいませんが、第一審裁判所が判示したように、相当と認められる範囲の最高額を超えると、すぐに、「不相当に高額」となってしまうのでしょうか。ここは日本語の問題、あるいは、社会通念によるのかもしれませんが、正直、疑問なしとはいえないように思います。
 ちなみに、処分行政庁(被告Y)は、「報酬が法人の役員の職務の内容等から見て対価として相当であると認められる金額を超える場合には、その超える部分が高額部分となるのであるが、不相当に高額であるか否かは、右規定に掲げられた諸々の事情等に照せば自ずから明らかとなるべきものである。…具体的には、通達回答方式によって抽出した類似法人の役員報酬支給状況の検討によって相当性の判断の基準となる具体的・客観的数値(平均値)を求めるとともに、当該法人における役員の職務の内容、当該法人の収益の状況及び使用人に対する給料の支給状況という事情の中に当該法人の固有のものとして特別に考慮すべき事情があるか否かを検討して右平均値を増減することによりなずべきである。」と主張していましたが、さすがに、第一審裁判所は、「特別事情がなければ平均値が相当な報酬額の上限であるという判断方法も採用することはできない」と判示していますね。