2016年1月31日日曜日

豊田佐助邸の梅と民法(債権法)の改正


1. (1) 今週末、名古屋の冷え込みは、思ったほどでもなかったです。

(2) 旧豊田佐助邸では、早くも、梅の花がほころんでいました(↓)。
 去年は、2月の終わりに、梅が咲いたとのブログに書いていたので、今年は、比較的早い梅の開花といえるのでしょうか…。

梅の花と旧豊田佐助邸の洋館
 
梅の花と旧豊田佐助邸の和館

(3) 豊田佐助さんという方は、自動織機で有名な豊田佐吉さん(長男)の弟さん(三男)です。
 ボランティアガイドさんによれば、旧豊田佐助邸は、元々は、豊田佐吉さんのお嬢さん、愛子さんとそのご主人、利三郎さんという新婚カップルのために建てられたとのこと。その頃は、白いタイル貼りの洋館のみだったそうです。その後、利三郎夫妻は、ご近所に引っ越したため(こちらは、現在マンションになっており、門と塀のみ、「旧豊田家門・塀」として、紹介されています。)、佐助さん一家が同邸に移り住み、和館も建てられたといいます。
 ちなみに、現在のトヨタ自動車社長である豊田章男氏は長男筋(佐吉さんからするとひ孫)、佐助さんの家系はアイシン精機などを率いていた関係で、同邸の現所有者もアイシン精機であり、名古屋市は、同邸を所有者から無償で借用し、一般に公開しているとのことです。

(4) ボランティアガイドさんは、とても丁寧に解説してくださり、同邸にいくなら、やっぱり、解説付きがおすすめです!
 一番、興味を惹かれた話は、蔵への隠れた入り口について。
 蔵のすぐ脇に、井戸のような外観のものが残っており、それが実は、トンネルを通じて、蔵への隠れた入口になっているというのです。
 同邸の和館の棟上げは大正
12年。蔵の建築年は定かではありませんが、以前は、洋館の裏に台所等がそなわっており、蔵まで、繋がっていたといいます。
 隠れた入り口を別に設けた理由はわかっていないそうですが、ご存命でいらっしゃる佐吉さんのお嬢さんは、「小さいとき、蔵で遊んでいたら、突然、父が、蔵の床から現れた…」というようなことをおっしゃっているそうです。
 

2. (1) ところで、先週、愛知県弁護士会で民法(債権関係)改正に関する研修がありました。民法改正に関する研修は、既に、何度も行われていますが、今回は、3回連続の3回目、慶應義塾大学の鹿野菜穂子教授をおよびして、行われました。

(2) 債権法改正というと、ことの発端は、今から遡ること6年ちょっと前。
 平成21年(2009年)10月の法務大臣から法制審議会への諮問を受け、同年11月、法制審議会に、民法(債権関係)部会が設置されたことにはじまります。
 まずは、論点整理が行われ(第1ステージ)、平成25年(2013年)に中間試案が発表されました(第2ステージ)。
 そして、遂に、昨年(平成27年、2015年)、改正法案(「民法の一部を改正する法案」)としてまとめられ(第3ステージ)、3月31日閣議決定、同日、第189回通常国会に提出され、現在、第190回通常国会においても、衆議院で継続審議とされています。

(3) 民法は、私法の一般法であり、「総則」、「物権」、「債権」、「親族」、「相続」の5編からなります。このうち、前三者を財産法、後二者を親族法とよんだりします。
 今回の改正は、債権関係なので、第3編「債権」が中心ですが、日本の民法典は、パンデクテン方式といって、一般的な規定が第1編「総則」にまとめられているので、第1編「総則」の改正も含まれます。
 第1編から第3編までは、根抵当権の条項が加えられたりという改正もありましたが、そのほとんどは、明治29年(1896年)に制定されたままでしたので、今度の大改正は、債権関係について、実に120年ぶりに見直すものといえるでしょう。

(4) 今回の民法改正は、消滅時効、法定利率、保証法制など、私たちの生活に影響をおよぼし得る改正を含みますが、未だ、法案が通っていない段階ですので、具体的な改正の中身については、おって、ご紹介していきたいと思います。
 今日は、民法改正そのものに対する感想を…。
 民法改正のための部会ができた後、弁護士の間では、これに反対する意見が噴出したように思います。
 私自身も、実は、民法を改正してほしくないなあ…と思っていました。
 それは、単純に、今の民法で、実務家として、不足、不便を感じていなかったということもあります。明治にできた民法が時代にそぐわなくなっている部分があるのは確かですが、個別の改正でも対応できないことはないのではないか…。そして、もっと本音をいえば、民法も、会社法のように全面改正されると大変だなあ…というのも、正直、なかっとはいえません。
 司法試験に合格したというと、驚いたことに、「六法全書を暗記したんでしょう。」といわれることが結構あります。勿論、そんなことは、ありません。でも、司法試験で勉強した科目については、それなりの勉強時間を費やしていますから、どこにどのような条文があるのかは、だいたい、把握しているものです。特に、択一試験の科目であった憲法、民法、刑法というのは、条文の丸暗記まではさすがにしていませんが、条文の一字一句に至るまで、神経を使って勉強しておりましたのは、確かです。その民法ががらりと変わってしまうのは、やはり、つらい…と思わないはずはありません(実際には、条文の配置は、そんなに変更がなくて、ほっとしました…)。

 もっとも、平成23年(2011年)から平成24年(2012年)にかけて、第2ステージの頃、内田貴東大名誉教授(法務省経済関係民刑基本法整備推進本部参与)のお話をうかがう機会が、2回ほどあり、その真摯なお話振りに、だんだん考えが変わっていきました。
 例えば、立法にコストベネフィット分析が必要なのは当然だが、民法改正には日本社会にとって長期的メリットがある、すなわち、民法を現代化することにより、国民にとってわかりやすくなるだけでなく、外国から見てもわかりやすくなる、そしてなんと、国際取引での準拠法としての魅力も増し、日本企業にとっての取引コストを下げる…等とまでおっしゃるのです。そのような近未来が民法改正により実際に訪れるものであろうか…とも思いますが、そこまで考えていらっしゃる内田先生の理想の高さに、感銘を受けもしました。
 また、中間的論点整理とこれに対する批判を丁寧に説明され、自らの説で民法をつくりかえようなんていう意図はまったくないのだ…と穏やかに話される姿も、印象的でした。
 とはいえ、民法改正案をみると、(詳しい経緯は存じませんが)債務不履行法制や売主の担保責任は、やはり、契約責任説がベースになっているなあ…などとも思います。
 この辺りは、内容にかかわるので、今後、また、取りあげてみたいと思います。

2016年1月21日木曜日

「ポチの活躍」


1. 日付が変わってしまったので、昨日(1月20日)になりますが、名古屋でも、今シーズン初めて、雪が積もりました。
 一昨年の大雪に比べると、積雪は少なかったように思います。
出勤前の雪かきを終え、久屋大通公園を通ると、誰かがつくった、ちょっぴりシュールな雪像が…(↓)。
   
久屋大通公園のちょっぴりシュールな雪像

2. ところで、一昨日(1月19日)の日経新聞夕刊に、前厚生事務次官の村木厚子さんの「ポチの活躍」というコラムがでていました。
 村木厚子さんといえば、「郵便不正事件」において、検事の証拠改ざん(フロッピーディスクの作成日付改ざん)を自ら見破り、無罪への道を切り開かれた強者…。
 その村木厚子さん、お嬢さんが小さい頃、仕事と子育ての両立で、いつも時間に追われ、イライラ…「早くしなさい」「ちゃんとやりなさい」と叱ってばかりの自分を憂慮し、ポチが活躍するように…。すなわち…

 母が娘を「早く○○しなさい」「○○しちゃダメ」と叱ると、娘は「ポチ」とよぶ。すると、どんな状況でも、母は、「ワン」と返事をする。

 この母と娘のやりとり、ものすご~く気に入ってしまいました(笑)。主従の関係を逆転してみる効用もあるのかもしれませんが、純粋に、クールダウンさせる方法として、気が利いているように思います。
 コラムは、「家族に愚痴を聞かせたくない人に、ポチを飼うことをお勧めする」としめくくられています。
 我が家も、ポチを飼おうかしら…。

2016年1月7日木曜日

七草粥とガレット・デ・ロワ


1.七草粥
 今日は人日の節句。
 七草粥を炊いて、いただきました。
 といっても、我が家はいつも、七草だけでなく、ニンニクと梅干を入れます。厳密には、七草粥とはいえないのでしょうか。
 もっとも、七草粥は、地方によって、様々だとか…。
 名古屋の義母にきいたところ、勿論、ニンニクなどいれたりしなかったそうですが、商家だったので、前日6日に、小僧さんが以下のような唄をうたいながら七つの調理道具で七草を叩いていたといいます。
 ♪七草なずな唐土の鳥 渡らぬ先に 七つ七草そろえ ストトトトン
 お正月の色々な慣習にも話がおよび、お帳とじという行事や、小豆とお餅の入ったお粥がふるまわれたことなどをききました。
   


七草粥(もどき?)と干支のワイン。
七草粥は、正月料理で疲れた胃を休めるといいますが、
ワインとでは…(苦笑)。

 
2.ガレット・デ・ロワ(galette des rois)
 話は、がらりとかわりますが…(笑)。
 最近、クリスマス頃から、お正月明けまで、デパート等で、ガレット・デ・ロワというお菓子を売っています。
 私は、ここ十何年か、このお菓子を楽しみにしています。
 
 ガレット・デ・ロワの中には、フェーブ(Feves)と呼ばれる小さな陶器が入っていて、切り分けられた中にフェーブが入っていると、金色の紙製の王冠をかぶれる(=その日、王様になれる)というもの。
 なんか、楽しいですよね♪
 最近は、フェーブが別添になっていて、淋しいです。

 ガレット・デ・ロワは、本来、公現祭(1月6日。嬰児(みどりご)イエズス様のもとに、東方の三博士がお祝いに駆け付けた日。)に食べられるフランスの伝統菓子だそうで、その起源は、古代ローマにも遡れるとか…。
 七草粥も、古く中国より伝わったといいます。
 節操なく様々な食文化を楽しんでいて、少々、お恥ずかしいですが、そのルーツに想いを馳せるのは楽しいなあ…とも思います。

 
  

  今年のガレット・デ・ロワ(別添のフェーブを裏から入れちゃいました♪)
今までのフェーブから…

2016年1月1日金曜日

新年を迎えて

 2016年を迎えました。
 旧年中は、ご厚情を賜り、誠にありがとうございました。
 本年は、今まで取り組んできた分野を大切にしつつ、新しいことにも挑戦していきたいと思っております。
 ブログも、これまで通り、細々とでも続けていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
かわいい屠蘇器と母からもらったお正月飾り

2015年12月31日木曜日

今年読んだ本、今年みた映画

 
1.  ついに、大晦日。
 大掃除は、あきらめモード。我が家にお正月はやってくるかと、毎年、焦りますが、一応、来るんですよねえ(笑)。
 

2.  今年を振り返るといっても、大変なので、今年読んだ本の中から、印象的だったものを上げると…。
 山口昌子さんの「フランス流テロとの戦い方 全仏370万人『私はシャルリ』デモの理由」かな。
 今年11月に、フランスのパリで同時多発テロがあったのは、記憶に新しいですが、実は、「シャルリ・エブド」への襲撃事件が起きたのも、今年だったのです(今年1月)。
 本書は、長年パリに住んで活動しているジャーナリストの方により、「シャルリ・エブド」襲撃事件とその背景、そして、「フランスの『国のかたち』」等について書かれたものです。
 パリ同時多発テロの報道において、「犯人はカラシニコフをもっていた」という趣旨の証言をしている市民がいるのをみて、日本人で銃の種類を言い分けられる人がどのくらいいるだろう…と、びっくりしたのを覚えています。
 フランスというと、日本人にとっては、比較的馴染み深い国ですが、この本を読んで、「フランスの『国のかたち』」について極めて基本的な理解を欠いていた部分もあるなと思いました。
 「自由、博愛、平等」はフランス革命に由来しますが、その「自由」につらなる「表現の自由」がフランスにおいてどのような位置づけにあるのか、フランスが「非宗教」の国であることの意味、移民大国と郊外問題など…。ニュースをみていて頭のどこかにひっかかっていたものが、解消されたり、新たに、疑問が広がったり…。
 様々な文化的背景や歴史をもつ国が国境を接して存する大陸諸国での動向に関心が向きにくいと言っていられない今日この頃、考えさせられることの多い本書でした。
 

3. 今年みた映画で印象に残っているといえば、今年読んだ本と趣があまりにも変わりますが、「スターウォーズ フォースの覚醒」です。
 みたばかり…。みるのを楽しみにしていました!
 シリーズで最初にみたのは、「帝国の逆襲」。初めての外国、カナダにホームステイした中学生の夏休み。カナダで知り合った日本人の高校生(女性です!)に「絶対、話がわかるから!」と誘われてみにいき、本当に、大体の筋がわかって、感動(笑)。
 久しぶりに、7話からシリーズが再開。思いもよらず、オリジナルキャストが出演していて、「うわ~」と驚き、思った通りの展開もあって、きたきたきた!…等。とにかく、やってくれるのが嬉しい!続きが楽しみです。

2015年12月29日火曜日

FORTRANを習った学生時代や審査部時代の思い出


1.  今年も、残すところ、今日を入れて、3日。
 年末押し詰まって、久しぶりに、事務所通信をホームページに載せました。
  http://www.hisaya-ave.com/jimushotsushin6/jimushotsushin6.pdf
 今回は、「忘れられる権利」特集号としております。
 「忘れられる権利」とは、今のところ一義的に用いられているとまではいえないかもしれませんが、一般的には、「インターネット上の個人情報について、検索事業者に対し検索結果の削除を求めること」とされています。
 私は、愛知県弁護士会の情報法関連チームに所属しているのですが、先日、チーム会で、「忘れられる権利」について、発表する機会がありました。
 最近、なかなか事務所通信をだせていなかったので、その発表資料を元に…という魂胆だったなのですが(笑)、いざ、まとめはじめると、思ったよりも、時間がかかりましたし、「わかりやすくご紹介」になっていないなあと、反省しきりです(汗)。
→ <後記>
     平成29年1月31日、最高裁が、検索事業者に対する削除請求が認められる判断基準を示しました。。
http://hisaya-avenue.blogspot.jp/2017/02/blog-post.html

 
2. そもそも、私が、「忘れられる権利」についてご紹介…というのも、気後れがないわけではないです(汗)。
 情報法関連チーム内には、弁護士の前職等から、情報処理技術にお詳しい方もいらっしゃいます。
 私は、そういう前職はなく、まだまだ、勉強することばかりです。
 ただ、まったく縁がなかったというと、そうでもない…という感じ…です(苦笑)。

 最初に、プログラミングに触れたのは、なぜか、大学の授業。法学部だったのですが、一般教養科目(自然科学)として「コンピュータ」(?科目名は忘れました…)をとったところ、工学部の先生と研究室の学生が手伝いに来られて、FORTRANを習うことに…。最後は、積分を解くプログラムを作った記憶です。成績は、よくありませんでしたが、これが、後に、少々、役に立ったのです。
 というのも、銀行に就職した後、思いもよらず、審査業務をシステム化する部署に配属されたのです。私がプログラムを書くわけではないのですが、全く知らないと困るだろうと、入行後、「MS-DOS」や「C言語」の研修を受けることになりました。
 当時、パソコンはPC9800シリーズ、OSはMS-DOS、表計算ソフトはLOTUS 1-2-3といった頃。ホストコンピューター向けのシステムと、パソコン向けのシステムを開発したのですが、実は、極めて簡単な業務過程をシステム化していたりして、自分で、パソコンでも、マクロをつくって、簡単な検証をしたりしていました。そして、システム設計の打ち合わせや、簡単な検証の際などに、大学の授業での経験が、少しですけれど、役に立ったと思います。どこで、何が役立つかは、わからないものです…。
 とはいえ、情報処理の分野は、まさに、日進月歩。私の経験程度では、現在の情報法の分野を取り扱っていくのに役に立つとは、とてもいえません。
 今年、情報法関連チームで、前職がおありの方等を除いて、ITパスポート試験を受験しよう、という取り組みがありました。私も、今年の9月、若い方にまじって、受験しました。この種の試験は、基礎知識の習得に役立ちますが、やはり、継続して勉強することが肝要です。今後も、情報法やその関連知識の習得に、つとめていきたいと思っています。
パソコンに向かって回答を入力し、
試験終了後、すぐに、結果がわかるのですが
やはり、送られてきた合格証書をみたときの方が嬉しかったです(笑)。

2015年12月21日月曜日

2つの平成27年12月16日付最高裁判決について


1. 夫婦同氏(夫婦同姓)および女性の再婚禁止期間を定める民法の規定(それぞれ、民法750条、同773条1項)が憲法に違反していることを主張し、法改正を怠った立法不作為の違法を理由に、国家賠償法に基づく損害賠償を求めた事案で、先日(平成27年12月16日)、2つの最高裁判所大法廷判決がだされ、新聞やテレビで大きく報道されていました。
 本日は、その話題を…。
 

2. 「補足意見」「意見」「反対意見」と2つの判決について

(1) 判決に入る前に、今回の報道に接して少々驚いたのは…。
 夫婦同姓に係る判決で、女性3人を含む5人の反対意見があったと報道されていたことです。  

(2) 最高裁に付される意見には、「補足意見」「意見」「反対意見」があり、違いがあります。「補足意見」は多数意見の理由に賛同するけど補足したい場合、「意見」は多数意見の理由とは違う理由で判決には賛同する場合、「反対意見」は、判決に反対する場合に付されます。
 なので、5人の反対意見があったと聞くと、判決は、10対5だったのだなと思ってしまいます。

(3) 実は、どちらの事案でも、反対意見は山浦善樹裁判官のみが述べていて、あとは全員一致で、上告棄却と判決しています。
 夫婦同氏制の事案では、民法の規定は違憲ではなく、国賠請求も認められないというのが多数意見による判決だったところ、女性3人を含む4人の裁判官から、民法の規定は違憲だけど、国賠請求は認められないとの意見が付されました。
 他方、再婚禁止期間の事案では、100日を越えて再婚禁止期間を設ける部分は違憲だが、国賠請求は認められないというのが多数意見による判決であり、再婚禁止期間を設ける規定全部が違憲であるとする鬼丸かおり裁判官による意見が付されています。
 そして、先ほど述べたように、どちらにも、規定は違憲だし、国賠請求も認められるとする山浦裁判官の反対意見が付されています。
 

3.夫婦同氏制事案(平成26年(オ)第1023号)の判決について

(1) 民法750条は、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と定めています(以下、「本件規定」といいます。)。
 “氏”があって、“名”があって、はじめて“氏名”として、自他識別機能(自分が他人から識別され、自分として特定される機能)が生じます。夫婦同氏制を定める本件規定により、婚姻を機会に、夫婦の一方は氏を改めなければならず、そのことにより、アイデンティティの喪失を感じたり、自他識別機能が阻害され不利益を被ったりする方がおられることは、何ら、特別なことであるとは思えません。
 ただ、本件規定が憲法違反といえるかといえば、また、別の話です。

  まず、多数意見からご紹介していきます。

(2)憲法13条違反であるとの主張について
 まず、上告人らは、「氏の変更を強制されない自由」が、憲法13条により保障される人格権の一内容を構成しており、本件規定は、これを不当に侵害するものであるから、憲法13条に違反すると主張しました。
 
多数意見は、氏名について、「社会的にみれば、個人を他人から識別し特定する機能を有するものであるが、同時に、その個人からみれば、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であって、人格権の一内容を構成する」と、先例(最判63.2.26)をひいて、氏名が人格権を構成することは認めています。
 ただ、多数意見は、氏が婚姻を含めた身分関係の変動に伴って改められることがあり得ることは、その性質上予定されており、そのような現行法制度の下における氏の性質等に鑑みると、「氏の変更を強制されない自由」は人格権の内容とは言えないとして、本件規定は憲法13条に違反しない等と判示しました。

(3)憲法14条1項違反であるとの主張について
 現状、96%以上の夫婦において、夫の氏を選択しています。
 上告人らは、かかる現状に鑑み、本件規定が性差別を発生させ、ほとんどの女性のみに不利益を負わせる効果を有するから、憲法14条1項に違反すると主張しました。
 これに対して、多数意見は、憲法14条1項について、「事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取扱いを禁止する趣旨のものである」と先例(最判昭和39.5.27等)をひいた上で、本件規定はその文言上性別に基づく法的な性別的取り扱いを定めているわけではなく、本件規定自体に形式的不平等が存在するわけではない等として、本件規定は、憲法14条1項に違反しないとしています。

(4)憲法24条1項及び2項に違反するとの主張について
 上告人らは、夫婦となろうとする者の一方が氏を改めることを婚姻届出の要件とすることで、実質的に婚姻の自由を侵害するものであり、憲法24条に違反する等と主張しました。
 これに対して、多数意見は、夫婦同氏制は、旧民法の施行された明治31年に我が国の法制度として採用され、我が国の社会に定着してきたものであり、氏は、家族の呼称としての意義があるところ、その呼称を一つに定めることには合理性が認められ、特に婚姻の重要な効果として、夫婦間の子が夫婦の共同親権に服する嫡出子となるということがあるところ、嫡出子であることを示すために子が両親双方と同氏である仕組みを確保するにも一定の意義があり、氏の選択に関し、夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めている現状からすると、妻となる女性が不利益を受ける場合が多い状況が生じるとしても、このような不利益は、婚姻前の氏の通称使用が広まることにより、一定程度緩和され得る等として、夫婦同氏制は、個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠く制度であるとは認められず、本件規定は憲法24条に違反するものではないとしています。

(5) 以上の通り、多数意見は、本件規定は違憲ではないと判断した上で、本件規定を改廃する立法措置をとらない立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けないとして、上告人らの上告を棄却しています。

(6) 寺田逸郎裁判長の補足意見
 法律関係のメニューに望ましい選択肢が用意されていない現行制度の不備を強調するような本事案の主張について、憲法適合性審査の中で裁判所が積極的な評価を与えることには、本質的な難しさがあるとし、民主主義的プロセスに委ねる(国会に任せる)ことがふさわしいと述べられています。
 国会で…という点については、多数意見も、なお書きで、上告人らは、夫婦同氏制を規定と捉えた上で、これよりも規制の小さい氏に係る制度、例えば、選択的夫婦別氏制をとる余地がある点について指摘するけれど、この種の制度の在り方は、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄に他ならない等と判示しています。

(7)岡部喜代子裁判官の意見(櫻井龍子裁判官、鬼丸かおる裁判官が同調)
 岡部裁判官は、近年女性の社会進出は著しく進んでおり、婚姻前後を通じて稼働する女性も増加し、婚姻による氏の変更により、識別困難となることは、単に不便であるというだけではなく、業績、実績などの法的利益に影響を与えかねず、しかも、社会のグローバル化やインタネット等で氏名が検索されることがあるなどの氏名自体が世界的な広がりを有するようになった社会では、氏による個人識別性の重要性はより大きい等といった現状に触れています。
 そして、96%を超える夫婦が夫の氏を称することは、その意思決定の過程に現実の不平等と力関係が作用しており、その点の配慮をしないまま夫婦同氏に例外を設けないことは、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した制度とはいえない等とし、現時点では、本件規定は、憲法24条に違反すると述べておられます。
 もっとも、憲法24条に違反することが明白であるということは困難であるとして、本件規定を改廃しない立法不作為は、国賠法上の違法の評価を受けないと、結論において、多数意見と同じとなっています。

(8)木内道祥裁判官の意見
 木内裁判官も、夫婦同氏制は憲法24条にいう個人の尊厳と両性の本質的平等に違反するとしています。
 すなわち、本件規定の憲法24条適合性で問題となる合理性は、夫婦が同氏であることの合理性はなく、夫婦同氏に例外を許さないことの合理性であるとした上で、同氏に例外を許さないことに合理性があるということはできないとします。
 そして、多数意見が、夫婦同氏により嫡出子であることが示されること、両親と氏を同じくすることが子の利益であるとしている点について、夫婦にも別れがあり、離婚した父母が婚氏続称を選択しなければ氏を異にすることになるのだから、夫婦同氏によって育成に当たる父母が同氏であることが保障されるのは初婚が維持されている夫婦間の子だけであり、未成熟子育成の責任を担うのは夫婦であることもあれば、離婚した父母であることもあり、事実婚ないし未婚の父母であることもあるのであり、実質的に子の育成を十分に行うための仕組みを整えることが必要であるとされているのが今の時代であって、夫婦同氏であることが未成熟子の育成にとって支えとなるものではない等と述べられています。

4.感想

(1) 夫婦同氏制事案の判決のご紹介だけで、うんと長くなってしまったので、今回は、再婚禁止期間事案の判決については、パスします。

(2) 夫婦同氏事案に係る最高裁判決に対する感想ですが…。
 今回の判決は、報道で大きく取り上げられたこともあり、その反響もそれなりに耳に入ってきます。本当に、様々な意見があり、賛成派と反対派の溝は思ったよりも深く、意外な方の意外な意見にびっくりすることも…。

(3) 私は、寺田逸郎裁判長の補足意見を読ませていただくと、なるほどなるほど…とは思うのですが、ただ、この件については、民主主義的プロセスに委ねていてもあまり変わりそうな気がしないなあ…とも思わずにはいられません。
 女性裁判官3名の意見は、働く女性の視点から本件規定の現時点での憲法24条適合性について的確に論じられているとは思います。
 もっとも、今回の最高裁判決を読んで、私が一番ハッとさせられたのは、木内裁判官の意見だったかもしれません。それは、子供の視点にも配慮されているように思ったからです。確かに、法律婚を尊重することは大切ですし、家族が同氏でまとまることは大変素晴らしいことであるとは思いますが、実際には、子供は色々な家庭で育てられているのであり、両親と子供が同じ氏でまとまることをあまり強調すると、一定の価値観を社会に醸成することになり、それが子供にとって酷な場合もあり得るのでは…と思うのです。

 現在の夫婦同氏制は確かに社会に定着していますが、今回の最高裁判決に伴う報道で、明治維新後(正確には、明治9年以降)、夫婦同氏制が導入された明治31年までは、夫婦別氏制だったことを知りましたし、それ以前も(江戸時代は苗字帯刀が制限されていましたが…)、中国や韓国のように、夫婦別氏が原則だったともききます。
 世の中の常識は、時代とともに、変化するのですから、あまり現時点での常識に軸足を深く突っ込みすぎるのも危険がないとはいえません。夫婦同氏制が違憲か否かはともかく、家族の形を定める法律自体が、もう少し多様性を許容することにより、社会全体の認識も変わっていく…という未来も、一考に値するのかな…と思ったりもしました。


5. 久しぶりのブログ更新で、また、だらだらと長く書いてしまいました。
 最後に、話題をがらりとかえて、今年のクリスマスツリーをアップしてみます。
 北欧風のつもり…?です(笑)。

ストロー素材のオーナメントを中心に
北欧風(?)にまとめてみました。
何年か前に、イオンでお得にまとめ買いしてます。
雪の結晶がついているレーステープがお気に入りです。
赤い帽子と赤い服の妖精は、
フィンランドではトントゥ(tonttu)、
スウエーデンではトムテ(tomtar)、
デンマークとノルウェーではニッセ(nisse)と
国によって呼び名は違うみたいですが、
サンタクロースのお手伝いをするらしいです。

 ちなみに、去年のクリスマスツリーは、こちら(↓)。
http://www.hisaya-avenue.blogspot.jp/2014/12/stap.html