2015年9月29日火曜日

仲秋の名月



1.   この間の週末、927日(日)は、仲秋の名月でしたね
 久屋大通公園を、「なんて綺麗なお月さま♪」と思いながら通り抜けようとしたら、テレビ塔に長蛇の列が…。
 思わず並んでしまいました(笑)。最終日となったCity Light Fantasia」という催しをやっていたのです。
 どんな催しかといいますと、「透明なものに映像を投影する技術を用いて、日本初となる、展望台のガラス窓への映像投影を実現。」とのこと。
 確かに、テレビ塔からみえる夜景に、プロジェクションマッピングが重なって、花火があがったり、銀河鉄道みたいな列車が走ったり…。仲秋の名月とともに、特別な夜景を楽しみました。
     

こちらは、天井に映し出されるタイプ。
                  
テレビ塔からの夜景だけでも、キレイです♪


帰る頃には、曇ってきてしまいました。

 

2. 昨日の帰途には、ちょうど上り始めたそれはそれは大きなお月さまにびっくり!!模様もくっきり見えます。 
 実は、昨日が満月(しかも、「スーパームーン」)なんですね。
 仲秋の名月が、満月でないことは、そう珍しいことではないこととか…。
 旧暦って、不思議です。

 先日の新聞には、「旧暦2033年問題」というトピックスがとりあげられていました。国立天文台の解説(↓)を読んでも、いまいち、ピンときません(汗)。
http://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/topics/html/topics2014.html

 

2015年9月14日月曜日

ハーグ条約に関する日豪合同あっせん人研修 ~Mediation-Training for Japanese-Australian family disputes~


1. ハーグ条約に係る研修と外務省の役割

 先週1週間201597日(月)~11日(金))、横浜で行われたハーグ条約に関する研修に参加してきました。
 ハーグ条約国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(The Convention on the Civil Aspects of International Child Abduction)については、以前にも、このブログで触れたことがあります。
http://www.hisaya-avenue.blogspot.jp/2014/11/261119.html
http://www.hisaya-avenue.blogspot.jp/2015/01/blog-post_26.html

 今回行われた研修は、講師ドイツ人オーストラリア人日本人を参加者として、日本・オーストラリア間の家族の紛争(含 ハーグ条約の案件)に係るあっせんについて学ぼうというもの。
 ハーグ条約は、「子の任意の返還を確保し、又は問題の友好的な解決をもたらすこと」(to secure the voluntary return of the child or to bring about an amicable resolution of the issues)を中央当局(ハーグ条約実施法3条で、日本における中央当局は、外務大臣とされています。)の役割の一つとしています(ハーグ条約7c)。
 これを受け、ハーグ条約実施法
9条も、「外務大臣は、…合意により実現するため、これらの者の間の協議あっせんその他の必要な措置をとることができる」と定めています。
 今回の研修も、外務省が関与して行われています。
 



2.話合いによる解決、調停とADR(裁判外紛争解決手続)

 ハーグ条約の返還事案では、子を連れ去った親(Taking parent)と連れ去られた親(Left behind parent)との間で、深刻な対立が予想され得ます。ですが、本来、その解決には双方の協力が必要です。また、ハーグ条約は、ひとまず、子の常居所地国へ返還しましょうという考え方であり、また、子が所在する国の裁判所は、原則として、親権や監護について判断できません。でも、話合いならば、これらも含めた柔軟な解決がはかれます。また、話し合いにより合意した約束の方が、よく守られる傾向にあるといいます。

 日本において、話し合いによる解決として、真っ先に思い浮かぶのは、調停(conciliationかもしれません。
 ハーグ条約に係る子の返還申立事件は、特別の非訟事件とされますが、裁判所は、当事者の同意を得て、いつでも、子の返還申立事件を家事調停に付することができます(実施法114条)。調停では、裁判官と2名の調停委員によって構成される調停者委員会が,当事者双方の意見の調整等を行います。調停の場合,子は常居所地国に帰国するのか否かのみならず,婚姻費用、養育費等の負担や面会交流等についても、話し合うことができます。

 このように裁判所が関与する調停のほかに、裁判所外で紛争に係る協議をあっせんする手続、すなわち、ADR(Alternative Dispute Resolution、裁判外紛争解決手続もあります。
 外務省が委託しているADR機関6つ東京三会(第一東京弁護士会の仲裁センター、第二東京弁護士会の仲裁センター、東京弁護士会の紛争解決センター)、大阪の公益社団法人総合紛争解決センター、沖縄弁護士会の紛争解決センター、そして、私の所属する愛知県弁護士会の紛争解決センターです。外務省の援助決定を受ければ、原則として、ADRを利用するための費用を外務省が負担します(詳細は事前にご確認ください)。また、ADRは、調停とは異なり、合意書を作成しただけでは、執行力はありません(事後的に仲裁手続等に移行することは可能です)が、インターネットテレビ会議システムを利用できる等の違いもあります(こちらも、詳細は事前にご確認ください)。
 
http://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/ha/page22_001072.html
 というわけで、研修には、家事調停官のほか、東京、大阪、沖縄、そして、愛知の弁護士の参加がありました。
 
3.研修では、ハーグ条約案件に係るmediationのあり方、オーストラリアと日本の家族法や文化の違い等を学んだほか、何回かのロールプレイ(role play session)が行われ、更に、オーストラリアと日本の間の二国間調停(co-mediation)の可能性等についても、協議されました。
 講師(Mr.Eberhard Carl & Ms.Sybille Kiesewetter)も、オーストラリア・日本の参加者も、素晴らしい方々ばかりで、活発な議論がなされ、時には、夕食後にロールプレイや議論がなされることも…。文化の違いやあっせんの難しさに改めて気づくこともありましたが、大変勉強になり、本当に貴重な経験となりました。
  

 



⇒ <後記>
     「ハーグ条約の基礎」事務所通信第7号に載せました。
   http://www.hisaya-ave.com/tsushin7-7.html
   PDF版はこちら。
   http://www.hisaya-ave.com/jimushotsushin7/jimushotsushin7.pdf



 

2015年9月5日土曜日

信長公生誕の地?勝幡城址。


1.  9月に入り、随分、過ごしやすくなったような気がします。
日の入りも、随分早くなってきました。
 

2.  先日、勝幡城址に立ち寄りました。
 かの織田信長は、勝幡城で生まれたという説もあるみたいですね(最近は、有力だとか…)
 石碑は、稲沢市にありますが、実際のお城は、稲沢市と愛西市にまたがっていたようです。
 私の使っているナビには入っていなくて、石碑にたどりつくまで、多少、うろうろしてしまいました(汗)。
 「愛知の城」(山田柾之著)では、「永正元年(1504年)ごろ、信長の祖父に当たる織田信定が築城した。信定の子・信秀は清洲城の三奉行の一人として勇名をはせ、後に那古野城を今川氏豊から奪取して居城とし、さらに古渡城や末森城を築き、勢いに乗じて西三河にまで進出した。」とあります。
 古渡城址については、以前、このブログで触れました。
 近年、信長の生誕地として、那古野城説よりも、勝幡城説の方が有力になったのは、信長が生まれたとされる天文3年(1534年)頃、信秀は未だ那古屋城を奪取していなかったとの論文が発表されたからのようです。
 信秀は、当初、清洲よりも西の地域を勢力圏としていたんですね。
 

勝幡城址。石碑の後ろの黄色い看板には、
「信長生誕」と書いてあります。

2015年8月30日日曜日

過ぎ行く今年の夏…戦後70年考


1. 今年の夏は、本当に暑かったですが、名古屋では、ここのところ天気も悪いせいか、セミの鳴き声が街から消えてしまいました。
 うるさいなあ~と思っていても、急に聞こえなくなると、淋しく思います。

 夏も終わりに近づいているんですね…。
 何日か前、晴れた日の久屋大通公園の写真をアップします(↓)。 
    
夏も終わりに近づいた久屋大通公園

 
2. 今年は、戦後70年ということで、安倍総理大臣が談話を発表されましたし、NHKなど、テレビでは随分特集番組が組まれていました。
 そうした番組を見ていてあらためて感心したのは、原爆を落としたのがどこの国か知らない人もいるということ…。
 いつまで、日本は謝らなければならないのかという問題提起の根底には、“やられた方は忘れない”という前提があると思うんですけれど、日本人は、あっさりやられたことも忘れるんですね(日本人の美点の一つかもしれませんが…)。
 他にやられた話だけではありません。
 NHKのドキュメント「特攻~なぜ拡大したのか~」をみていたら、腹立たしさまで覚えました。
 ところで、若い頃は、結構、海外旅行に行った方だと思うのですが、アジア地域では、学校で教えられていない日本軍の爪痕に遭遇することがあります。
 例えば、友達とタイを自由旅行したとき、クワイ河の鉄橋まで足をのばしました。クワイ河マーチで有名な映画「戦場に架ける橋”The Bridge on the River Kwai”」は見たことがありましたが、思いがけず立ち寄った「戦争博物館」(JEATH War Museum)は、私にとっては、衝撃でした。
 シンガポールでも、日本軍による華僑虐殺事件を忘れないために建てられたという記念碑というのがあり、今まで聴いたこともなかったので、驚きました。
 このように旅先で衝撃や驚きを覚えたにもかかわらず、帰国後、特段、調べたりしていないのが反省するところ…。
 海外だけでなく、広島の平和記念資料館やひめゆりの塔の平和祈念資料館では、語り部のお話に、心を揺さぶられました。

 戦後70年を一つの契機として、やったことも、やられたことも、きちんと精査し、後世に丁寧に語り継いでいかなければならないのではないか…と強く思う今年の夏でした。

2015年8月7日金曜日

東芝の不正会計とライブドア事件 ~その2~


1. 前回のブログで、東芝不正会計についての報告書について、少々ご紹介しました(↓)。
 http://hisaya-avenue.blogspot.jp/2015/08/1.html
 今日は、ライブドア事件の感想について、述べてみたいなと思います。
 
2.ライブドア事件の感想

(1) ライブドア事件は、当時、マスコミを、大層、賑わせていましたね。
 なので、当初の逮捕容疑が「風説の流布」であることくらいは記憶に残っていました。
 でも、「弁護士が分析する企業不祥事の原因と対策」(新日本法規、
2012年)で、偶々、ライブドア事件を担当することになり、当時の新聞記事だけでなく、刑事事件・民事事件の判決や関連書籍を読んだりして、改めて、こんな事件だったんだとびっくりしました。

(2) 事件の推移
 株式会社ライブドア(平成8年有限会社オン・ザ・エッジとして設立。平成162月に商号変更。以下、「ライブドア」といいます。)事件の端緒は、ご記憶の方が多いとは思いますが、平成18116日(月)の東京地検特捜部及び証券取引等監視委員会による強制捜査の着手でした。その後、ライブドアの代表取締役らの逮捕へとつながり、マスコミでは、当初の逮捕容疑である偽計と風説の流布のみならず、経常利益等粉飾の事実等についても、それはそれは、大きく報道されました。
 東京地検による強制捜査は、俗に「ライブドア・ショック」と言われるような形で、日本の株式市場に大きな影響を与えたのも、ご高承の通り…。
 ライブドア自体の株価についても、強制捜査により急落し、平成18124日まで6営業日連続でのストップ安となり、僅か1週間で、75パーセントも暴落しました。
 そして、東証は、ライブドア株式及びライブドアマーケティング株式について、同年同月21日に開示注意銘柄に指定、同年同月23日には監理ポストに割り当て、さらに、同年313日には、同年414日の上場廃止と同年314日からの整理ポスト割り当てを決定…という何とも素早い対応となりました。
 事件後、ライブドアは、その保有する事業子会社を次々に売却し、平成2385日には解散し、清算手続へ移行という末路をたどりました。なお、平成233月期の同社有価証券報告書によれば、個人株主及び機関投資家を原告とする損害賠償請求訴訟の結果によっては、1225千万円及びこれに付帯する遅延損害金の支払いが発生する可能性があるとされていますが、同期末のライブドアの総資産は、なんと、約300億円となっています。

(3) 堀江氏の刑事事件で認定された事実
 強制捜査開始時、ライブドアの代表取締役社長兼最高経営責任者であった堀江氏は、東京地裁にて懲役26月の実刑判決を言い渡され(東地判平19.3.16)、東京高裁では、その控訴が棄却され(東高判平成20725)、最高裁も、平成23425日に上告を棄却、これに対する異議申立ても斥けられたため、第一審東京地裁で言い渡された実刑判決が確定しました。
 もっとも…。これは、個人的感想なのですが、堀江氏に係るとても長い刑事事件の判決を読んだ限りでは、う~んていう感じなのです。証人尋問等、実際の証拠に接したわけではないので、極めて限定的な資料にしか触れていないわけですが…。
 刑事裁判で認定された犯罪事実は、以下の通り…。

①東証が提供するTDnetTimely Disclosure networkの略で、適時開示情報伝達システムのこと。)によって、(a株式交換及び(b)子会社の四半期業績に関し、虚偽の事実を公表し、もって、子会社株式の売買のため及び同株式の相場の変動を図る目的をもって、偽計を用いるとともに、風説を流布した(風説の流布及び偽計使用の罪にあたります。以下、「第1事案」といいます。)

及び

②ライブドアの平成169月期において、約3億円の経常損失が発生していたにもかかわらず、(a売上計上の認められないライブドア株式売却益、及び、(b)架空売上げを売上高に含めるなどして経常利益を約50億円として記載した内容虚偽の連結損益計算書を掲載した有価証券報告書を提出した(虚偽有価証券報告書提出の罪にあたります。以下、「第2事案」といいます。)

(4)  まず、第1事案について。
 第1事案は、a株式会社マネーライフ社(以下「マネーライフ社」といいます。)を株式交換によって買収した際のTDnetでの平成161025日付公表にかかわるものと、(b)ライブドアマーケティングの平成1612月期第3四半期業績に関するTDnetでの平成161112日付公表にかかわるものがあります。
 特に、前者(
a)について…。
 ライブドアマーケティングがマネーライフ社を株式交換によって買収する際、
TDnetにより、
「株式交換比率(
11)については、第三者機関が算出した結果を踏まえ両社間で協議の上決定した」
旨、公表した(なお、上記株式交換比率については、後日、ライブドアマーケティング株式の
100分割に伴い、100(ライブドアマーケティング)対1(マネーライフ社)に訂正。)のですが、
虚偽であるとされたのは、

)株式交換比率を11とする部分、
及び、
ⅱ)同株式交換比率は第三者機関が算出した結果を踏まえて決定したという部分
です。
すなわち、
)につき虚偽であるとされたのは、ライブドアがマネーライフ社のデューディリジェンスを実施する際、マネーライフ社の企業価値を実際は約1億円程度と評価していたにもかかわらず、同社の企業価値とは無関係な合併手数料等を上乗せする等してこれを4億円とし、その上乗せした価格を前提にして、上記株式交換比率を決めているからであり、
また、
)につき虚偽であるとされたのは、第三者機関とされる上記株式交換比率算定に係る報告書を作成した会社は、ライブドアファイナンス従業員により作成、提出された同報告書を、形式面の確認をしたのみで、算定内容の正当性等については一切検討することなく、その代表取締役及び所属公認会計士の各印を押印しているので、同報告書の実質的な作成者はライブドアファイナンス従業員であるといえるから…というのです。
 特に、ⅱ)の認定には、第三者機関を経たこと自体は事実であり、そこで実質的な判断が行われなかったとしても、それは第三者機関側の責任ではないか等の批判があります(高山佳奈子「ライブドア事件控訴審判決」判例時報2048171。弥永真生「風説流布・偽計使用と虚偽有価証券報告書提出―ライブドア刑事事件」(ジュリスト1414243)。 

(5)  2事案は、ライブドアにおいて、平成15101日から平成16930日までの連結会計年度につき、経常損失が3億円ほど発生していたにもかかわらず、売上計上の認められないaライブドア株式売却益約37億円、及び、b株式会社ロイヤル信販及び株式会社キューズ・ネットに対する架空売上げ約15億円を、それぞれ売上高に含めるなどして経常利益を約50億円として記載した内容虚偽の連結損益計算書を掲載した有価証券報告書を、財務省関東財務局長に対し提出したというものです。
 これについては、特に、aが…。
 (a)のライブドア株式売却益が売上計上を認められないとされた理由は、以下のとおりです(この「自己株式売却益還流スキーム」のうち、クラサワコミュニケーションズ株式会社に係るスキームの概要については、別図をご参照ください。なお、別図の(注)で説明しているように、実際には、貸株も利用されています。)
 ライブドアの子会社である株式会社ライブドアファイナンスは、平成169月期において、ライブドアが行ったクラサワコミュニケーションズ株式会社およびウェッブキャッシング・ドットコム株式会社との株式交換を利用してM&Aチャレンジャー1号投資事業組合が取得したライブドア株式の売却益を、EFC投資事業組合等の複数の投資事業組合(以下、あわせて「本件各組合」といいます。)を経由して受領し、合計約37億円を売上計上し、同年9月期のライブドアの連結決算においても、同額を連結売上として計上しました。しかし、本件各組合はいずれも、ライブドアファイナンスが会計処理を潜脱する目的、いわば脱法目的で組成した組合だから、そのように一定の独立性が認められている組合を悪用してなされた取引においては、当該組合の存在を否定すべきである(!)というのです…。
 ところで、虚偽有価証券報告書罪において、虚偽記載か否かは、当時の会計基準に照らして判断されるべきとされています(長銀事件最高裁判決(最判平20.7.18判時201910)参照)。そこで、ここでは、本来、少々難しい会計の話が出てくるはずです。すなわち、投資事業組合を連結対象とするか否か。そして、ライブドア事件当時、投資事業組合を連結対象とするかについて、明確なルールは存在しなかったといいます(平成1898日に公表された企業会計基準委員会実務対応報告第20号「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」が、これを明確化したといいます。)(前掲高山・171、弥永・244)。
 もっとも…。裁判所は、投資事業組合を連結対象とするか否かの会計基準について、正面から検討していません。各組合を脱法目的であるとしてその存在を否定し、ライブドアファイナンスがライブドア株式を売却したものとみなしているのです。
 そして、連結子会社による親会社株式の処分差益の計上方法については、会計基準上、損益勘定ではなく資本勘定(連結貸借対照表の資本の部の「その他資本剰余金」)となることが、明らかです(企業会計基準第
1号「自己株式及び法定準備金の取り崩し等に関する会計基準」)。なので、ライブドアファイナンスがライブドア株式を売却したものとみなされるのであれば、ライブドア株式売却益約37億円は、これをライブドアの連結損益計算上、売上げとして計上することは許されないことになります。
  私が一番びっくりしてしたのは、この各組合の存在を否定したところでしょうか…。そうか、刑事事件は、極めて規範的な判断をするんだった…と思いました。
 罪刑法定主義と租税法律主義。似た印象を受けますが、租税法の分野では、「納税者の表示とは異なる真実の事実関係や法律効果に基づいて課税することが認められるのは、当該法律関係に係る意思表示が民法上の通謀虚偽表示であると認定されるといった極めて例外的な場合に過ぎない」とされています(中里実「租税法における事実認定と租税回避否認」『租税法の基本問題』(有斐閣)・
131。なお、東京高判平22.5.27にも、概ね同旨の判示があります。)
 本件では、各組合に係る組合契約は私法上有効に存在していると思われる(私法上、不存在とはいえないし、通謀虚偽表示も成立しないと思われます。)のに、何故に、刑法上、会計処理を潜脱する目的(この認定にも議論の余地があるとも思われる)で設立された組合は存在しないとみなされるのでしょうか…。「正常な経済活動の一環として有価証券投資を行う場合であっても複数の組合を用いる仕組みが採用されることは稀ではない」(大杉「ライブドア事件判決の検討(下)」商事法務181115)ことを勘案すれば、より深い検討を要するのではないだろうか…と思ってしまうのです(前掲高山・171に同旨の記載あります。)。
 
別図 ライブドア事件
クラサワコミュニケーションズ㈱に係る
自己株式売却益還流スキーム 

 (6)  冒頭の「弁護士が分析する企業不祥事の原因と対策」(新日本法規、2012年)では、コンプライアンス上のポイントとして、「会計基準、会計処理の重要性を認識し、公認会計士等の専門家のアドバイスを尊重する。」旨、指摘しました…。
 また、「有価証券報告書虚偽記載等の不実開示には、刑事罰、課徴金(行政措置)、証券取引所による制裁、民事責任(証券訴訟等)、社会的制裁等のリスクが存する。特に、巨額の損害賠償を負う恐れのある証券訴訟には、要注意である。」とも…。

3. 最近…

  ライブドア事件は国策捜査だ…というような指摘がありますね。脱稿後、堀江氏や宮内氏といった事件当事者の本も読んだりしましたが、事件の背後については、私ごときでは、わかりません。でも、検察に見込み違いがあったことは、想像に難くないようにも思われます。もし、見込み違いがあったとすると…。う~ん…。強制捜査等の影響はあまりに甚大だったのではないかと思うのですが…。
 ただ、今年になって、堀江氏の自伝(『我が闘争』)を読んだら、ずっと感じていた義憤のようなものが雲散霧消しそうになりました…。そこが、堀江氏の凄さかな…(苦笑)。最近、テレビにもよくでてらっしゃるので、楽しく拝見しています。