2015年11月10日火曜日

四日市 ~かつての公害訴訟と共同不法行為論~



1.   名古屋は、今日、小春日和のとても気持ちの良い一日でした。でも、さすがに11月、とっぷりと日が暮れるのは、はやいです。
 

2.(1)  昨日は、所用があり、四日市を訪れました。
  近鉄の四日市駅からJR四日市駅方面に向かって走る中央通り、本当に立派ですね。
                  
ランチによった近鉄百貨店からの眺め

 
(2) 四日市と言えば、石油コンビナートが有名です。

      
こちらも近鉄百貨店からの眺め。煙突と煙がみえます。

石油コンビナートといえば…。四日市の繁栄の基礎ともなり、また、かつては、四日市ぜんそくを引き起こしたこともありました。
 四日市公害訴訟(津地判四日市支昭和47.7.24を含む四大公害訴訟は、昭和42年から44年にかけて、健康被害を受けた住民が加害企業に対し、相次いで提起したもので、いずれも、民法の不法行為の領域の理論の発展を促したといいます(大塚直「7 四大公害訴訟判決」法学教室349・20)。
 特に、四日市公害訴訟は、「共同不法行為論」で有名です。「共同不法行為」って、不法行為論の論点の一つで、特に、関連共同性をめぐる議論については、受験時代、頭を悩ませた記憶があります。かつての通説は、客観的関連共同性説とよばれ、判例もこの立場であるとされています。この説では、関連共同性について、客観的共同関係があればよいとします。これに対し、有力にとなえられたのが、主観的関連共同性説。関連共同性について、客観的共同関係では足りないと、要件を重くしつつ、各人の行為と損害との間の因果関係は不要で、共同行為と損害の間に因果関係が認められればよいとします。さらに、強い関連共同性、弱い関連共同性と、類型化する説もあらわれました。
 四日市公害訴訟判決は、以下のように述べます。

 「共同不法行為が成立するには、各人の行為がそれぞれ不法行為の要件をそなえていることおよび行為者の間に関連共同性があることが必要である」「ところで、右因果関係については、各人の行為がそれだけでは結果を発生させない場合においても他の行為と合して結果を発生させ、かつ、当該行為がなかったならば、結果が発生しなかったであろうと認められればたり当該行為のみで結果が発生しうることを要しないと解すべきである」。
 四大公害訴訟は、この後、日本が、「公害対策立法先進国」になる原動力になったといわれています(前掲大塚)。
 また、損害賠償が認められても、企業が操業をやめなければ、被害はおさまりません。その後の公害訴訟においては、論点が、損害賠償から差止めへと移っていきました(大村敦志「四日市ぜんそく事件()」法学教室353・65)。

 

(3) ところで、私は、四日市というと、萩尾望都さんの「かたっぽのふるぐつ」も思い浮かびます。作品中では、「Y市」とされていて、四日市という具体名はでてこないのですが…。
 特に、ぜんそくで急死したクラスメート渡辺悠君について、担任の先生が、「渡辺は公害に勝てなかったなあ」というと、小学生の主人公が、「先生!ユウはかんぷまさつじゃ公害に勝てないって言ってました。…あれは毒だもの。亜硫酸ガスにはプロレスラーだって勝てない。負ける。」と言い返すシーン。当時の少女漫画では異色で、鮮烈な印象が残っています。
 前述の四日市公害訴訟判決は、とても長いのですが、最後の損害論において、慰謝料の算定で考慮した点として述べられるくだりに、急死された原告の方の話がでてきます…。つい、印象が重なります…。

 
3. 四日市には、昨年、大雨の中、お昼を食べに行ったこともあります。
「浜松茂」さん、素晴らしかったです♪
    
渡り廊下。強く降りしきる雨もまた一興。

7月だったので、アユを焼いてくださいました。