1. (1) 2月3日木曜日に、外務省(東京・霞が関)で行われたエバーハルト・カール独元裁判官(Mr.Eberhard
Carl)による講演会「ドイツでのハーグ事案に関する執行手続における子の福祉」を聴いてまいりました。
(2) 日本において、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」、いわゆる「ハーグ条約」が発効したのは、平成26年4月。
外務省では、これまでに166件(関係国は32か国)の申請を受け付け,外国への子の返還が12件,日本への返還が6件、実現したそうです(今回の講演会に係る外務省の案内による)。
なお、ハーグ条約については、このブログでも、以下のように、3度、とりあげています。
外務省では、これまでに166件(関係国は32か国)の申請を受け付け,外国への子の返還が12件,日本への返還が6件、実現したそうです(今回の講演会に係る外務省の案内による)。
なお、ハーグ条約については、このブログでも、以下のように、3度、とりあげています。
○「日本人の子供に初めてハーグ条約が適用されたとされるケース(英国の裁判所が日本への返還を命じた)で、日本に帰国後、大阪家裁の調停で、(子供が)母親の暮らす英国に戻る結果となったという記事を読んで」(2015年1月26日記)
○「ハーグ条約に関する日豪合同あっせん人研修 ~Mediation-Training for Japanese-Australian family
disputes~」(2015年9月14日記)
⇒ <後記>
「ハーグ条約の基礎」を事務所通信第7号に載せました。
http://www.hisaya-ave.com/tsushin7-7.html
PDF版はこちら。
http://www.hisaya-ave.com/jimushotsushin7/jimushotsushin7.pdf
⇒ <後記>
「ハーグ条約の基礎」を事務所通信第7号に載せました。
http://www.hisaya-ave.com/tsushin7-7.html
PDF版はこちら。
http://www.hisaya-ave.com/jimushotsushin7/jimushotsushin7.pdf
(3) 今回の講演のタイトルにあるハーグ事案に関する執行手続ですが、まず、日本における執行手続を概観してみます。
子の返還命令が確定しても、任意に子が返還されない場合、強制執行を申立てることになるわけですが、日本におけるハーグ事案に関する執行手続は、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(以下、「実施法」)といいます。」に規定されています(実施法の「第四章 子の返還の執行手続に関する民事執行法 の特則」参照。ちなみに、ハーグ事案以外については、明文の規定はなく、判例等に基づいて、実際の運用がつみあげられてきています)。
以前のブログでも軽く触れましたが、強制執行には、間接強制と代替執行(代替執行をベースとしつつアレンジした手続)があり、実施法は、代替執行を申立てる前に、間接強制を試みなければならないとしています(間接強制前置。実施法136条。)。なので、間接強制を試みても、なお、子が返還されない場合に、代替執行に進むことになります。
代替執行には、子の解放を行う段階(解放実施)と、解放した子を常居所地国へ返還する段階(返還実施)があります。実施法では、子の監護を解くために必要な行為を実施する解放実施者を執行官に限定する(実施法138条)一方、返還実施者についてはそのような制約はなく、LBP(Left Behind Parent,子を連れ去られた親)が想定されています。
解放実施者(執行官)は、債務者(通常、TP (Taking Parent子を連れ去った親))の説得のほか、債務者の住居等への立ち入り、子を捜索したりします(実施法140条1項1号。必要があれば戸の開錠もできます。)。また、債務者が抵抗すれば、これを排除するために威力を用いたり、警察上の援助を求めることができます(同条4項)。ただし、子に対して、威力を用いることはできません(同条5項)。
解放実施は、債務者の住居その他債務者の占有する場所で行うことを原則としていますが、その他の場所でも例外的に実施することができます(実施法140条1項2項)。ただし、いずれの場合においても、子の監護を解くために必要な行為は、子が債務者と共にいる場合に限りすることができるとされています(同条3項)。
子の返還命令が確定しても、任意に子が返還されない場合、強制執行を申立てることになるわけですが、日本におけるハーグ事案に関する執行手続は、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(以下、「実施法」)といいます。」に規定されています(実施法の「第四章 子の返還の執行手続に関する民事執行法 の特則」参照。ちなみに、ハーグ事案以外については、明文の規定はなく、判例等に基づいて、実際の運用がつみあげられてきています)。
以前のブログでも軽く触れましたが、強制執行には、間接強制と代替執行(代替執行をベースとしつつアレンジした手続)があり、実施法は、代替執行を申立てる前に、間接強制を試みなければならないとしています(間接強制前置。実施法136条。)。なので、間接強制を試みても、なお、子が返還されない場合に、代替執行に進むことになります。
代替執行には、子の解放を行う段階(解放実施)と、解放した子を常居所地国へ返還する段階(返還実施)があります。実施法では、子の監護を解くために必要な行為を実施する解放実施者を執行官に限定する(実施法138条)一方、返還実施者についてはそのような制約はなく、LBP(Left Behind Parent,子を連れ去られた親)が想定されています。
解放実施者(執行官)は、債務者(通常、TP (Taking Parent子を連れ去った親))の説得のほか、債務者の住居等への立ち入り、子を捜索したりします(実施法140条1項1号。必要があれば戸の開錠もできます。)。また、債務者が抵抗すれば、これを排除するために威力を用いたり、警察上の援助を求めることができます(同条4項)。ただし、子に対して、威力を用いることはできません(同条5項)。
解放実施は、債務者の住居その他債務者の占有する場所で行うことを原則としていますが、その他の場所でも例外的に実施することができます(実施法140条1項2項)。ただし、いずれの場合においても、子の監護を解くために必要な行為は、子が債務者と共にいる場合に限りすることができるとされています(同条3項)。
(4) カール元裁判官の講演では、まず、ドイツにおけるハーグ条約の手続で、子供の福祉がいかにはかられているかが、強調されていたと思います。
子の奪取事案では、多くのTPが奪取の事実を子に伝えていないという研究があるそうで、このように子が適切な情報を与えられていない状況は、子にとって、悲劇であるとおっしゃいます。ドイツでは、親と子供の間で利益が相反する可能性がある場合、裁判所は、子のために、guardian ad litem (GAL、訴訟後見人)を任命しなければなりません(ドイツ家事事件及び非訟事件手続法(Act on Proceedings in Family Matters and in Matters of Non-contentious Jurisdiction, APFM)158条)。GALは、とても重要な役割を担っており、特別な訓練が必要とされています。GALは、まず、何が起きているのかを、子に適切に説明する必要がありますし、子の意見や希望等を聴いて判事に伝え、また、親とコンタクトをとり、子の利益を思い起こさせ、友好的な解決に導いたりします。なお、判事は子に直接審問する必要もあります(APFM159条)。
ご高承の通り、ハーグ条約では、子の任意の返還、友好的な解決が望ましいと考えられているところ、ドイツでも、中央当局及び裁判所により、mediationが推奨されています。
このように、子の利益が最優先であること、友好的な解決が十分に試みられる必要があること等が強調される一方で、カール元裁判官は、国が本気で執行する気がないとわかるとTPは裁判所の判断に従わない、稀なケースとはなるが、威力を示す必要もあるという厳然たる態度も示されていたように思います。
子に対する強制執行は、返還ケースにおいてのみ、子の利益を考慮してこれが正当化され、かつ、他により深刻でない方法が可能でない場合に限り、認められます。
裁判所は、子の返還の妨害行為等を避けるための命令をだすことができます(国際家族手続法(International Family Law Procedure Act, IFLPA)15条)。ヨーロッパには、子の返還を妨害するための国境を越えたサポーター集団がいるそうで、子の返還の場面にメディアを連れて押しかけ、子にとっても、TPにとっても、悲劇的な状況に陥ることがあるようです。
また、執行官(bailiffs)は、TPがいなくても、例えば、学校や幼稚園において、子供を連れて行く権限を与えられています。任意の返還に応じない親は、裁判所の命令に同意したと思われたくはないだろうから、むしろ、TPの面前での執行は望ましくないというニュアンスも感じられました(個人的な感想です)。
当然、執行官は、適切なトレーニングを受けなければなりません。
ドイツには、少年局(Youth Welfare Office, YMO)という機関があり、友好的な解決をサポートしたり、面会を実施したりする他、子の返還事案で、強制執行の実施をアシストします(IFLPA9条1項)。もちろん、警察も、強制執行の実施をサポートします。
子の奪取事案では、多くのTPが奪取の事実を子に伝えていないという研究があるそうで、このように子が適切な情報を与えられていない状況は、子にとって、悲劇であるとおっしゃいます。ドイツでは、親と子供の間で利益が相反する可能性がある場合、裁判所は、子のために、guardian ad litem (GAL、訴訟後見人)を任命しなければなりません(ドイツ家事事件及び非訟事件手続法(Act on Proceedings in Family Matters and in Matters of Non-contentious Jurisdiction, APFM)158条)。GALは、とても重要な役割を担っており、特別な訓練が必要とされています。GALは、まず、何が起きているのかを、子に適切に説明する必要がありますし、子の意見や希望等を聴いて判事に伝え、また、親とコンタクトをとり、子の利益を思い起こさせ、友好的な解決に導いたりします。なお、判事は子に直接審問する必要もあります(APFM159条)。
ご高承の通り、ハーグ条約では、子の任意の返還、友好的な解決が望ましいと考えられているところ、ドイツでも、中央当局及び裁判所により、mediationが推奨されています。
このように、子の利益が最優先であること、友好的な解決が十分に試みられる必要があること等が強調される一方で、カール元裁判官は、国が本気で執行する気がないとわかるとTPは裁判所の判断に従わない、稀なケースとはなるが、威力を示す必要もあるという厳然たる態度も示されていたように思います。
子に対する強制執行は、返還ケースにおいてのみ、子の利益を考慮してこれが正当化され、かつ、他により深刻でない方法が可能でない場合に限り、認められます。
裁判所は、子の返還の妨害行為等を避けるための命令をだすことができます(国際家族手続法(International Family Law Procedure Act, IFLPA)15条)。ヨーロッパには、子の返還を妨害するための国境を越えたサポーター集団がいるそうで、子の返還の場面にメディアを連れて押しかけ、子にとっても、TPにとっても、悲劇的な状況に陥ることがあるようです。
また、執行官(bailiffs)は、TPがいなくても、例えば、学校や幼稚園において、子供を連れて行く権限を与えられています。任意の返還に応じない親は、裁判所の命令に同意したと思われたくはないだろうから、むしろ、TPの面前での執行は望ましくないというニュアンスも感じられました(個人的な感想です)。
当然、執行官は、適切なトレーニングを受けなければなりません。
ドイツには、少年局(Youth Welfare Office, YMO)という機関があり、友好的な解決をサポートしたり、面会を実施したりする他、子の返還事案で、強制執行の実施をアシストします(IFLPA9条1項)。もちろん、警察も、強制執行の実施をサポートします。
(5) 前述のとおり、日本においては、ハーグ条約が発効してから2年も経過しておらず、外国への子の返還が実施されたのは、12件にすぎません。
しかし、今後、件数が増加していけば、強制執行手続にまで至るケースも増えることが予想され得ます。
日本に先んじてハーグ条約に加盟し、実績を積みつつ、運用を改善してきたドイツでは、強制執行のみならず、日本と異なるハーグ条約の実施の状況があるようで、色々と考えさせられ、勉強になりました。
しかし、今後、件数が増加していけば、強制執行手続にまで至るケースも増えることが予想され得ます。
日本に先んじてハーグ条約に加盟し、実績を積みつつ、運用を改善してきたドイツでは、強制執行のみならず、日本と異なるハーグ条約の実施の状況があるようで、色々と考えさせられ、勉強になりました。
(6) カール元裁判官は、昨年9月横浜で行われた日豪合同あっせん人研修の講師でもいらっしゃいました。
そこで、講義の後、横浜の研修に参加した弁護士や家事調停官が集まり、カール元裁判官を囲んで、夕食会が催されました。
この夕食会でも、カール元裁判官や諸先輩から色々なお話がうかがえて、大変、勉強になりました。
そこで、講義の後、横浜の研修に参加した弁護士や家事調停官が集まり、カール元裁判官を囲んで、夕食会が催されました。
この夕食会でも、カール元裁判官や諸先輩から色々なお話がうかがえて、大変、勉強になりました。
2. (1) ところで、冒頭で触れました通り、今回の講義は、外務省で行われたのですが、遅刻しないようにと、東京駅に少し早めに着く新幹線にのりましたので、時間を調節するために、新橋駅から外務省まで歩きました。
また、講演と夕食会の間にも時間がありましたので、芝田村町を散策しました。
また、講演と夕食会の間にも時間がありましたので、芝田村町を散策しました。
(2) 芝田村町については、次回にでも…。
(3) 外務省のある霞が関は、以前のブログでも触れました通り、大学卒業後勤めていた銀行近辺であり、霞が関から新橋までは、親睦会等のため歩いたことが何度もあり、昔からあるお店をみつけると、懐かしくて…。
新橋駅は大規模改良工事中。 SL広場は、噴水がなくなり、「愛の像」の場所が変わってる! |
みつけた! 昔からあるお店「末げん」。 三島由紀夫が自決前に晩餐に訪れたことで有名なお店ですよね。 部の親睦会でいったときは、建て替え前。 「鳩山一郎」元首相の書が飾ってある部屋でした。 その後、建て替え中、仮店舗にもいったことがあります。 流しの三味線弾き(?)が通り、これまた、風情がありました。 |
末げんの昔のパンフレット。 黒板塀のしっぽりとした外観でした。 |
烏森通。ここはあまり変わってないように見えます。 もっとも、飲みに行ったことないですが…。 |
おおっ!大好きな堀商店ビルは健在♪ |
(4) 今回、外務省に入るには、勿論、身元チェックがありましたが、私が銀行にお勤めしていた当時は、どこも警備も緩やかで、外務省の食堂にランチを食べに行ったことを思い出しました。
もっとも、農林水産省の食堂の方が、人気があったような…。農林水産省の食堂は、現在、誰でも入れるんですね。
あと、通産省(古い!)別館の上にはテニスコートあったなあ…(笑)。
もっとも、農林水産省の食堂の方が、人気があったような…。農林水産省の食堂は、現在、誰でも入れるんですね。
あと、通産省(古い!)別館の上にはテニスコートあったなあ…(笑)。