2015年8月5日水曜日

東芝の不正会計とライブドア事件 ~その1~


1. 毎日、本当に暑い日が続きます。
 今年は、昨年収穫した種で、再び、ゴーヤの緑のカーテンに挑戦していますが、暑さのわりには、発育がいまいちで、カーテンとは呼び難いです…。
 今のところ、特に、避暑にもいっていないので、涼やかなライティングのテレビ塔の写真を…。
栄のテレビ塔。青いLEDがきれいです。


 最近、ブログの更新がままならない感じなのですが、今日は、コンプライアンスの話題を…。

 

2.東芝の不正会計について

(1) 第三者委員会の調査報告書が、7月20日に公表されました。
 https://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/policy/message.htm
 要約版でも、84頁もあります(以下、単に、「報告書」といいます。)。

(2) 報告書が指摘する不正会計は4種類。報告書の章立てからいうと、以下の通り。
 「第2章 工事進行基準に係る会計処理」
 「第3章 映像事業における経費計上等に係る会計処理」
 「第4章 パソコン事業における部品取引等に係る会計処理」
 「第5章 ディスクリート、システムLSTを主とする半導体事業における在庫の評価に係る会計処理」
 連結会計年度の修正額は、20082014年度、税前利益ベースで
  工事進行基準 ▲477億円
  部品取引   ▲592億円
  経費計上   ▲88億円
  半導体在庫  ▲360億円
   合 計   ▲1518億円
 とされています。

(3) 例えば、工事進行基準ではどのようなことがおこなわれたかというと…。
 工事進行基準とは、「工事契約に関して、その工事の完成以前に、工事収益総額、工事原価総額及び決算日における工事進捗度を合理的に見積もり、これに応じて当期の工事収益及び工事原価を計上する方法」です。
 大規模な工事を受注すると、決算期をまたいで工事が進行するということがありますよね。会計上、収益は実現したときに認識するのが原則です(実現主義)。でも、長期にわたる工事では、工事を完成させ引き渡した決算期にどーんと収益を認識するのではなく、その進行に応じ、決算期ごとに収益と費用を適正に配分しましょうね…というのが、工事進行基準かと思います。
 そして、工事進行基準では、工事原価総額を少なく見積もると、売上の過大計上になります…、報告書では、15の案件で、売上の過大計上ないし引当金の過少計上が指摘されています。

(4) 報告書が指摘した「直接的な原因」の一番目は、「経営トップらの関与を含めた組織的な関与」。
 「いくつかの案件については、経営トップらが意図的な見かけ上の当期利益の嵩上げの実行や費用・損失計上の先送りの実行又はその継続を認識したのに、中止ないし是正を指示しなかったものが認められる。また工事進行基準案件の中には、社内カンパニーから工事損失引当金の計上の承認を求められたのに対して、経営トップがこれを拒否したり先延ばしの方針を示したと認められる案件があり…(略)。このようにコーポレートの経営トップらの関与等に基づいて、不適切な会計処理が多くのカンパニーにおいて同時並行的かつ組織的に実行又は継続された不適切な会計処理については、経営判断として行われた…(略)」等としています。ちなみに、報告書において、コーポレートとは、「社長、事業グループ担当執行役、スタフ部門担当執行役及びスタフ部門の総称」をいい、カンパニーとは、「自主経営責任(損益責任)を負う東芝の事業区分(組織)」をいうとのことです。
 その他、「経営トップらにおける『見かけ上の当期利益の嵩上げ』の目的」「当期利益至上主義と目標必達のプレッシャー」「上司の意向に逆らうことができない企業風土」「経営者における適切な会計処理に向けての意識又は知識の欠如」等があげられています。
 「間接的な原因」としては、内部統制、取締役会の監督機能、監査委員会の監査機能、会計監査人による監査等が、十分機能しなかったことがあげられています。そりゃあそうでしょうね…。

(5) 報告書の「最後に」では、創業140年の歴史を持ち、我が国の誇るリーディングカンパニーが極めて多額にわたる不適切会計処理を継続的にしていたことに「誠に驚き」であったが、ヒヤリングを実施した役職員は、「おしなべて、真面目かつ真摯に業務に取り組んでいることが窺われた」そうで、「東芝が真に再生していくことを切に望む」等と、記載されています…。

 

3. ライブドア事件との相違

 
(1) 上記報告書をうけて、報道では、東芝について、有価証券報告書に虚偽記載などの問題があると判断されれば、東証は、「特設注意市場銘柄」への指定を、証券取引等監視委員会は、金融商品取引法に基づく課徴金納付命令勧告を、それぞれ検討する等とされています。

(2) 東証については、20138月に、上場廃止基準や特設注意市場銘柄制度を見直す規則改正が行われているものの、東証、証券取引等監視委員会、あるいは、検察の対応は、ライブドア事件とは随分違う…等と、指摘されたりしていますね。
  ライブドア事件については、愛知県弁護士会研修センター運営委員会法律研究部コンプライアンスチーム編「弁護士が分析する企業不祥事の原因と対策」(新日本法規、2012年)で、偶々、執筆を担当することになり、刑事事件・民事事件の判決や関連書籍を読んだりしました。
 東芝については未だ処分等はっきりしていない段階ですので、比較は難しいですが、ライブドア事件の感想を、次のブログで、少々、述べてみたいなと思います。