2015年4月21日火曜日

マイナンバー法について


1. 昨日は、二十四節気の「穀雨」だそうで、名古屋では、少し強い雨が降りました。
 今日、外堀を通ると、山吹が咲いていました。
名古屋城外堀(久屋橋付近)のヤマブキ
 
 その隣には、白いヤマブキ…!?
 時代劇で「山吹色の菓子」などとでてくるように、ヤマブキは色(大判小判の色…?笑)の名前ともなっているので、シロヤマブキって変な感じがします。

 
外堀(久屋橋付近)のシロヤマブキ(?)



2.(1) 今日は、マイナンバーの話題を…。
 先週、弁護士会の情報関連法チームのチーム会で、「マイナンバー法」がとりあげられました。最近、新聞等でも、よく目にしますよね。
 「マイナンバー法」は正式名称を、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」といい、平成253成立しました。その施行は、平成27105日等とされています(政令第171)。
 すなわち、今年(平成27年)10から、住民票を有するすべての人12ケタのマイナンバー(法律上は、「個人番号」といいます。同法2条5項。)が通知され、来年(平成28年)1から、順次、その利用開始される…とされています。
 なお、会社法等により設立登記法人国の機関地方公共団体にも、13ケタの番号が割り振られます(こちらは、法律上、「法人番号」といいます。同法215項)。

(2)  マイナンバー制度導入の趣旨は、内閣官房の資料によれば、複数の機関に存在する個人の情報同一人の情報であるということの確認を行うための基盤であり、①社会保障・税制度の効率性・透明性を高め、②国民にとって利便性の高い、③公平・公正な社会を実現する、等としています。

(3)  マイナンバー制度は、既に導入されている住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)とどう違うの?と思われるかもしれません。
 実は、「個人番号」の定義規定からもわかるように、マイナンバー(個人番号)は、住基ネットで割り当てられた11ケタの住民票コードをもとに、割りふられます
 住民基本台帳カード(以下、「住基カード」といいます。)も、マイナンバー制度で平成281月から発行される予定の個人番号カードも、どちらも身分証明書として利用できるとされますが、内閣官房の資料では、住基カードは平成281月から発行されず、また既に取得した住基カードは、個人番号カードを取得した時点から、廃止するとされています。もっとも、住基カードの交付状況は、極めて低レベルだといいますよね。
 住基カードでは顔写真は選択制でしたが、個人番号カードでは、顔写真を券面に記載しなければなりません。個人番号カードのICチップには、プライバシー性の高い個人情報は記録されないとされますが、券面記載事項である氏名、住所、生年月日、本人の写真等は、ICチップに記録されます
 また、住基カードは、券面に住民票コードの記載がありませんが、個人番号カードには、個人番号が券面に記載されます。もっとも、個人番号カードに個人番号が記載されるといっても、お店等で個人番号カードを身分証明書として利用する際、店員は、写真等を確認して身分確認するのはいいけれど、個人番号を書き取ってはならない、とされています(同法20条が定める収集等の制限にひっかかるのです。内閣府がだしている逐条解説48頁参照)。
 ちなみに、個人番号カードの交付は、申請によるとされています(同法171項)。

(4) 行政によるマイナンバーの利用は、今のところ、社会保障分野、税分野、災害対策分野とされています(同法9条、別表第一参照。なお、逐条解説の9条の解説では、「将来的には幅広い行政分野で利活用することも念頭に置」いているとしています)。
 マイナンバーの利用が開始されると、企業においては社会保障の分野(社会保障料の支払い等)や税の分野(給与所得の源泉徴収票の作成等)で、マイナンバーの取り扱い必要となります(法律上、企業は、個人番号関係事務実施者になります。同法2条13項)。
 しかるに、先日の日経新聞では、マイナンバー制度へのシステム対応ができている企業は、2
弱にとどまっているという記事がでていました。
 この点、今年10月に個人番号の通知がはじまると、従業員から個人番号の提供を受ける等、マイナンバーの取扱いが発生しますから、そろそろ、
特定個人情報保護委員会がだしている「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」等を参照して、準備をはじめた方がよいと思われます。経団連も、「マイナンバー制度への対応準備のお願い」をだしており、主な準備事項として、対象業務の洗い出し、対処方針の検討、マイナンバー収集対象者への周知、関連システムの改修(自社にてシステム構築を行っている場合)等をあげています。上記ガイドラインの安全管理措置については、中小規模事業者向けの特例が設けられ、実務にも配慮しているとされます。
 
気を付けなければならないのは、マイナンバーを利用できる事務は、マイナンバー法により厳しく限定されており(原則として、社会保障や税に関する手続書類を行政機関に提出する等の個人番号関係事務)、本人の同意があったとしても、利用目的を超えてマイナンバーを利用できないことです。せっかく各従業員に固有のマイナンバーがふられるのだから、この機会に、人事考課等もマイナンバーで管理しよう…などということはできません。
 また、万一、企業の情報担当者が従業員のマイナンバーを外部に漏らしたりする場合などを慮って、厳しい罰則が設けられています。企業は、情報管理に一層配慮する必要があり、中小企業においても、マイナンバーの運用開始を、個人情報の取扱全般を見直す機会とするとよいのではないかと思われます。


(5) マイナンバーについては、このブログもしくは事務所通信で、また、とりあげていきたいと思っています。