2015年3月27日金曜日

商標法の改正により新しいタイプの商標が登録できるようになります!


1. ここ数日、名古屋では、寒の戻りで、冷え込んでいましたが、今日の午後には、随分と、寒さが緩みました。週末には、桜(ソメイヨシノ)などの花が一気に綻びそうです。
 澄んだ青空に満開のモクレンが綺麗だったので、写真をアップします。
 白木蓮(ハクモクレン)と辛夷(こぶし)って、見分けるのが難しいですよね。たぶん、モクレン…だと思います。

 
満開のモクレン(たぶん…)

2. 商標法の改正

 
(1) 改正商標法(平成26514日法律第36号「特許法等の一部を改正する法律」)が本年(平成27年)4月1日から施行されます。この商標法の改正により、新しいタイプの商標を登録できるようになります。
 そこで、今日は、もうすぐ施行される商標法の改正について、ざっくりみてみたいと思います。
 (特許庁のHPはこちら↓)
  https://www.jpo.go.jp/seido/s_shouhyou/new_shouhyou.htm

(2) 今回の改正により、日本で新たに商標登録できるようになった商標は、以下の①から⑤の5つのタイプです。これらは、主要先進国では、既に、保護対象となっており、今般の改正は、日本においてもこれらを保護対象としようとするものです。 
 

色彩のみからなる商標

単色又は複数色彩の組合せのみからなる商標(これまでの図形等と色彩が結合したものではない商標)。
例えば、セブンイレブンオレンジ、緑、赤の三本の平行線や、ティファニー包装紙の色(ティファニーブルー)といえば、イメージが湧きやすいと思います。これらは、オーストラリアや米国で商標登録されています。
 

商標

音楽音声自然音等からなる商標であり、聴覚認識される商標。
例としては、MSWINDOWSを搭載したパソコンを起動したときの例の音や、ハリウッド映画(MGM)がはじまるときに流れるライオンの吠え声、久光製薬の「♪ひ・さ・み・つ」などがあげられます。これらも、他国では、商標登録されています。
 

動き商標

文字や図形等が時間の経過に伴って変化する商標。
 東レの「NANOALLOY」が欧州で登録された例としてあげられています(http://www.nanoalloy.jp/)。
 

ホログラム商標

文字や図形等がホログラフィーその他の方法により変化する商標(見る角度によって変化してみえる文字や図形など)。
米国で商標登録されている例として、AMERICAN EXPRESSのクレジットカードの表面にあるホログラムなどがあげられます。
 

位置商標

文字や図形等の表章を商品等に付す位置が特定される商標。
米国で商標登録されている例として、LEVI STRAUSS& COのシャツのポケットの外側に常置されるタグの位置などがあげられます。
 

(3)  冒頭に、新しいタイプの商標登録できるようになったと書きましたが、①と②については、「商標」の定義にかかる商標法2条の改正により、保護されるようになりました。このうち、「色彩」については、改正前の規定では、文字、図形等と結合していることが必要だったところ、改正後は、(文字、図形等と結合しておらず)輪郭のない「色彩」のみでも、登録し得るようになったということです。
 

<改正後の商標法2条1項
「この法律で『商標』とは、人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であって、次に掲げるものをいう。」(以下、省略。太字筆者。)

  これに対し、③から⑤については、従来、保護対象になり得なかったとまではいえませんが、今回の改正で出願方法が整備される等したため、出願・登録が可能になったと解されています。
 なお、③(動き商標)と④(ホログラム商標)は、商標法5条2項1号の「商標に係る文字、図形、記号、立体的形状又は色彩が変化するものであって、その変化の前後にわたるその文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合からなる商標」に該当します。また、⑤(位置商標)は、商標法5条2項5号に定める「経済産業省令で定める商標」に該当します(商標法施行規則4条の7)。
 

(4)  新しいタイプの商標を導入するにあたり、標章の「使用」の定義が見直された他、商標登録出願に関する手続が整備されたりしました。新しいタイプの商標について商標登録を受けようとするときは、商標の詳細な説明を願書に記載する等しなければならず、登録商標の範囲を定めるにあたっては、詳細な説明等が考慮されます。
 

(5)  商標は、自己の業務に係る商品・役務を、他人のそれから識別するために使用するものです。つまり、商標には、自他商品・役務識別力が必要であり(商標法3条1項各号)、これを欠くと登録を拒絶されるのが原則ですが、特定の者によって使用された結果、需要者が誰の業務に係るものか識別できるようになった商標については、登録を受けることができます(使用による識別力の獲得、同法3条2項)。新しいタイプの商標は、使用による識別力の獲得により、登録が認められることが多いのではないかといわれています。
 

(6)  なお、前述のように、商標は、自己の業務に係る商品・役務を、他人のそれから識別するために使用するものであり、自他商品等の識別機能を発揮得する形での商標の使用は、「商標的使用」と称されています。逆にいうと、「商標的使用」がなされていない場合には、商標権侵害を構成しないと解されています。今般の改正では、「商標権の効力が及ばない範囲」として、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標」が追加されました(商標法26条1項6号)(その旨の裁判例が集積されていることを受けてのことです)。
 

3. 今回の改正の背景には、平成25年6月閣議決定された政府の戦略等において、今後10年で世界最高の「知的財産立国」を目指すとされていることがあるようです。
 今回の改正法、すなわち、平成26514日法律第36号「特許法等の一部を改正する法律」により、特許法では、国際的な制度調和の観点も踏まえ、救済措置の拡充や、特許異議の申立て制度創設される等しています。

 
4. 今日の午後は、日弁連と愛知県弁護士会が共催する「弁護士の国際業務シンポジウム」に出席しました。シンポジウム自体は、知的財産権を扱うものではなく、商標法の改正についても触れらていません。
 ただ、弁護士としての人生は、日々、是、勉強だなあ…との思いを新たにする今日この頃です。