日々に気づく素朴な疑問が物事の本質にかかわっていたり、難問への入口だったりすることって、あるような気がします。そして、そういう素朴な疑問は、多くの場合、大変優秀な先人達が疑問を解消してくださっていたり、深く取り組んでいてくださることが多いです。
思い出すと、幼稚園のお便りに、「『なぜ』がいっぱいですね」と書かれ(先生を困らせていたのでしょうか…震)、長じても、色々な疑問が浮かんでは消えていきます(笑)。
1.慣性の法則(なぜ電車の中でジャンプしても後ろに飛ばされないの?)
小学生の頃、電車に乗っていて、どうして走っている電車の中でジャンプしても後ろに飛ばされないのだろうと、急に不思議に思うようになりました。
そこで、思いきって、小学校の担任の先生に質問すると、「地面でジャンプして同じ位置に着地するのは普通だと思っているかもしれないが、地球はものすごいスピードで自転しているんだぞ。動いている物にのっている人は、その動いている物と同じスピードで動こうとするから、ジャンプしたからといって、急にその場に留まったりしないのだ。」と教えてくださいました。地球は自転していると知識では知っていましたが、地面がそんなすごいスピードで動いているとは想像できなかったので、ビックリしたものです。中学校に入ると、これは慣性の法則という、ニュートンの運動3法則の第一法則の話なのだと知りました。
(誤振込について、似たような?経験があったことについては、以前のブログで触れました…苦笑)。
国または地方公共団体は、履行の催告として督促を行いそれでも租税が完納されないときは、納税者の財産から租税債権の強制的満足を図ることができます。このような納税者の財産から租税債権の強制的実現を図る手続を滞納処分又は強制徴収といいます(金子宏『租税法24版』1037頁)。
国税の滞納処分に関する一般法として、国税徴収法があり、関税及び地方税の滞納処分については国税滞納処分の例によることとされています。
私は、以前、何度か、地方公共団体で債権回収の研修をしたことがありますが、それは、滞納処分という簡易かつ強力な債権確保の方途を与えられていない私債権と非強制徴収公債権に関するものです。やはり、滞納処分ができない債権については、地方公共団体は債権回収に苦労するようですね。
滞納処分は、狭義の滞納処分と交付要求にわかれます(後者の交付要求は、現に進行中の強制換価手続の執行機関に換価代金の交付を求め、それによって租税債権の満足を図る手続で、弁護士としては、破産管財人をしているときにでてきます。)。
前者の狭義の滞納処分においては、国税徴収法47条が、「次の各号の一に該当するときは、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押さえなければならない。(以下略)」と規定しています。
私が国税局で任期付職員をしていた頃、何かのきっかけで、滞納処分による差押の話になり、憲法35条は捜索差押について令状主義をとっており、いわゆるマルサ(国税局査察部)の犯則調査であっても、「地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官があらかじめ発する許可状により」(国税通則法132条1項)捜索差押する必要があるのに、滞納処分による差押で令状がいらないのはおかしいのではないかと疑問に思ったことがありました。その際、自分が所有する憲法の基本書などを含め、色々と調べてみてみましたが、満足いく回答は得られませんでした。
しかし、今回の報道に接し、ふと、単純なことに気がつきました…。債務者が任意に債務を履行しないとき、近代国家では債権者が自力救済をはかることは禁止されており、勝訴判決など債務名義という国のお墨付きを得て、裁判所の強制執行を利用することにより、はじめて権利実現が可能となるところ、滞納処分の場合、国のお墨付きや強制執行が不要なだけなのではと…。
金子先生の『租税法』を改めて読むと、「私法上の債権については、原則として、その存否および金額について裁判所の判断を経たうえ、司法機関にその履行の強制を求めなければならない。これに対し、租税については、その存否および金額を確定する権限(確定権)と任意の履行がない場合に自らの手で強制的実現を図る権限(強制徴収権・自力執行権)とが租税債権者たる国および地方団体に与えられているわけであるが、これは、租税の確実かつ能率的な徴収を図るためである。」と記載されています。
阿武町では、昨日(6月8日)付けで取立権が発生し、約4290万円の回収が完了したと報道されています。全額回収まではいっていませんが、ひとまず、よかったですね。
主要な争点は、
①審査請求人に本件各返礼品の受領による経済的利益があり、これを一時所得の金額の計算上総収入金額に算入すべきか否か
②本件各返礼品の受領による経済的利益があり、これを一時所得の金額の計算上総収入金額に算入すべきである場合、本件各評価額が過大であるか否か
ふるさと納税の返礼品の受領については、国税庁が一時所得にあたるとの見解(質疑応答事例「『ふるさと納税』を支出した者が地方公共団体から返礼を受けた場合の課税関係」)をだしていますが、この見解がだされたのは、ふるさと納税制度が導入された直後の平成22年であり、一部報道で「官製ネット通販」と揶揄されるほどふるさと納税を仲介するウエブサイトが整備される以前のことです(平成27年度以降、ふるさと納税制度の利用が大幅に増加し、いわゆる返礼品競争が生じたといわれています。)。
一時所得にあたるというためには、所得税法34条1項の規定から非対価性要件を充たす必要であるところ、返礼品は寄附の対価となっている事実を前提とすれば、非対価性要件を充たすことはないと考えられます。
というのも、売買契約において、目的物を受け取った側が課税されるというのは聞いたことがありません。これは対価を支払っているからではないかと考えたのです。
調べてみると、岡村忠生他『ベーシック税法第7版』(有斐閣・2013年)にAがBに物を売って代金(金銭)を得る売買契約において、Aが受け取る代金は「収入金額」となるが、Bが受け取る物は「収入金額」とならないことについて、記載がありました。ただし、「金銭を出せば収入金額はなく、物を出せばある。収入金額があるかどうかは、入ってきた方ではなく、出て行った方で決まる」という説明で、恥ずかしながら、いまひとつ、しっくりきませんでした。
税法学会の報告では、出席されていた先生(教授)から、「収入金額に関する一考察」(岡村忠生、法学論叢158巻第5・6号192頁)に、「所得税法を学びはじめた学生がしばしば陥る難問に、資産を購入したとき、収入金額はどうなるか」がとりあげられていると教えていただきました。
拝読すると、確かに、初学者が気がつきやすいかもしれない…、しかも…、難問だなあ…と思った次第です。