2014年12月30日火曜日

今年読んだ本の中から…


1. 先日、用事があって帰省したら、東京タワーがハートマークでライトアップされていて、とてもかわいかったので、写真をアップします。

ハートマークの東京タワー
 
2. 日本人の読書量が減少しているといいます
 文化庁の「国語に関する世論調査」では、「読まない」との回答が最も多く、47.5%にのぼったとか…。
 かく言う私も、もともと、読書家とはとてもいえない上、近年、読書量が確実に減っています。最近では、1カ月に2~3冊の本を読むかなという程度(法律の本は除きます。)…。
 

3. 今日は、今年読んだ本(しかも、今年発刊した本)の中で、印象に残ったものを3冊あげて、簡単な感想を記してみます。
 感想には、あらすじ、ネタバレが含まれますので、まだ読んでおられない方は、ご注意いただければと思います
 
(1)  川名 壮志 著「謝るなら、いつでもおいで」(集英社)
 
2001年におきた「佐世保小6同級生殺害事件」を題材としています。
著者は、被害少女の父親(当時、毎日新聞の佐世保市局長)の部下だった新聞記者です。
今年、奇しくも、佐世保市で、女子高生が同級生に殺害されるという痛ましい事件がありました…。

ある日突然おこった事件に巻き込まれた人々の様子がとてもよく描かれていました。新聞記者がこのような事件にどういう対応をするのかも…。

途中までは、被害少女の父親に感情移入して読んでいました…。
それが、最後の次兄の手記(?)で、マスコミに身を置く父親として立派に振舞っていたと思われる被害少女の父親が、次兄の父親として完璧ではなかったことが、明かされます。次兄は、悲嘆にくれる父親の手前、妹の死を十分に悲しめなかったばかりか、事件について誰にも話をする機会がなかったために自ら背負い込んだ荷をおろすことができず、高校入学後、不登校になってしまいます。
といっても、誰が被害者の父を責めることができましょうか。妻に先立たれた上に、娘の凄惨な死を目の当たりにし、いっぱいいっぱいだったことと思います。
次兄は、父親を恨まないとしつつも、母親が生きていてくれたら…と吐露します。
本当に、胸が痛みました。

結局、どうして、11歳の加害少女があのような凄惨な事件をおこすことになったのか…。
加害少女は、もう成人しているといいますが、少なくとも、この本執筆時まで、加害少女からの謝罪はなかったそうです。
そんな中、事件によりその人生に多大な影響を受けざるを得なかった次兄の手記にでてくる「謝るなら、いつでもおいで」という言葉が胸をうちます。
 
(2)  スザンナ・キャハラン著「脳に棲む魔物」(KADOKAWA
 
脳のことについては、随分前に、利根川進さんと立花隆さんが対談した「精神と物質」という本を読んで以来、とても関心があります。

本の帯には、“医学ミステリー”云々と書いてありましたが…。著者自身が体験した脳疾患について書かれています。
もっとも、著者は、ニューヨーク・ポストの記者なので、ルポルタージュの体を保っていると思います…。

著者のスザンナは、記者として働いていた24歳のとき、突然、幻視や幻聴に悩まされるようになり、その後、みるみるうちに、症状が悪化し、口から泡を吹いたり、全身が痙攣する発作をおこすようになります。

途中までは、精神疾患かと思って読んでいたのですが…。なんと、著者が罹患していたのは、自己免疫疾患の一種。つまり、自分の抗体が自分の脳を攻撃してしまったというのです。
この疾患、最近、発見されたそうで、女性に患者が多いらしく、著者曰く、これまでエクソシストなどの対象とされた悪魔付きや、人格が豹変し、精神疾患と診断された患者の中には、自己免疫疾患の患者が含まれていたのではないかと…。

すごい体験なさったんですね、というだけでなく、改めて、脳や免疫システムの不思議に、思いをいたす作品でした。
 
(3)  ジョー・ウォルトン著「図書室の魔法」(創元SF文庫)
この本の主人公モリは、母親から虐待を受けたと主張しているのですが、件の母親が、「魔法」をつかって主人公に災いをなそうとしていると信じていたり、「フェアリー」とお友達だったりと、なかなか、痛いところがあります(ごめんなさい)。

主人公が交通事故にあったのは間違いなく、母親の虐待については、魔法云々はともかく、実際にあったのかもしれないし、被害妄想に陥っている部分があるのかもしれない。妖精は、見えたのかもしれないし、あるいは、見えたと思わないとやっていけなかったのかもしれない。
ウエールズというお国柄も影響していることでしょう。

結局、主人公をひきとってお嬢さん学校に通わせてくれたお父さんはなかなかいい人で、しかも、全寮制の女子高にいながら通うことが可能になった図書館の読書会で出会ったハンサムくんとの恋路…とちょいと安易な方向に話が進んでいきますが…。

この本が印象に残ったのは、私が、そもそも、マニア(モリはSFマニアです。)の薀蓄をかたるのをきくのが好きだから…(読んだことのない本ばかりでしたが…)。それと、一番、痛い「フェアリー」を本気で信じているところに、共感できないわけではなかったから…。
私には、残念ながら、「フェアリー」のお友達はいません(笑)。でも、この本を読んでいて思い出したのですが、小学生の頃は、佐藤さとるさんの本読み、コロボックルに、是非、会ってみたいと思っていたし、なんと、中学に入ってからも、萩尾望都さんの「塔のある家」を読み、妖精がいないと思ったら、みえなくなっちゃうから、妖精がいるって信じられる大人になろう!などと真面目に思っていたことがあったような…。

思春期の頃は、今では忘れてしまったようなことを、色々と考えたり思い悩んでいたはず…、当時は、絶対忘れまいと思っていたこともあったような気がするのに、今では、その端緒すら見いだせなかったりする…、などと思いを馳せながら、読みました。
 
4. 今年も残すところあと1日。
何かと気忙しいですが、来る新年が良い年となりますように。