2017年12月24日日曜日

いわゆる外れ馬券事件 北海道事案の最高裁平成29年12月15日判決について


1.外れ馬券の購入代金が必要経費として認められるかが争われた北海道事案の最高裁平成291215判決について

(1) 以前このブログで、外れ馬券の購入代金が必要経費として認められるかが争われ大阪事案(刑事事件:最判平成27.3.10北海道事案(民事事件:東京地判平成27514日、東高判平成28421日)について触れたことがあります。
http://hisaya-avenue.blogspot.jp/2015/03/blog-post.html
http://hisaya-avenue.blogspot.jp/2015/05/blog-post_20.html
https://hisaya-avenue.blogspot.jp/2016/04/28421.html

 先日(平成291215)、北海道事案の最高裁判決がでました。

(2) 北海道事案の概要は、最高裁判決によれば、以下のとおりです。
 X(納税者)は、平成17年から平成22年までの6年間で、中央競馬のレースで、1節当たり、数百万から数千万、1年当たり合計3億円から21億円程度、馬券を購入し続けました。日本中央競馬会に記録が残る平成21年度においては、中央競馬の全レースのうちの約70.8%のレースで馬券を購入しています。
 その購入方法は、日本中央競馬会に登録されたすべての競走馬や騎手の特徴、競走場のコースごとのレース傾向等に関する情報を継続的に収集・蓄積・分析し、レースごとに、競走馬の能力、騎手(技術)、コース適性、枠順(ゲート番号)、馬場状態への適正、レース展開、競走馬のコンディション等の考慮要素を評価、比較することにより着順を予想し、予想の適度の高低と予想が的中した際の配当率の大小との組合せにより、購入する馬券の金額、種類及び種類ごとの購入割合等を異にする複数の購入パターンを定め、これに従い、当該レースにおいて購入する馬券を決定するというものでした。
 Xは、このような馬券の購入方法(大阪事案のようなソフトウエアは利用していない。)により、なんと、1年当たり約1800万円から約2億円の利益を得ていたというから驚きです。
 そして、Xは、平成17年分から21年分までの期限後確定申告と22年分の期限内確定申告を行い、その際、当たり馬券の払戻金に係る所得(「本件所得」)は雑所得に該当し、外れ馬券の購入代金は所得税法37条1項の「必要経費」に当たるとして税額を計算したところ、所轄税務署長は、本件所得は一時所得に該当し、外れ馬券の購入代金は一時所得に係る総収入金額から控除することはできないとして、本件更正処分等を行ったので、Xその取消しを求めて本訴提起に至りました

(3)  北海道事案の第一審(東京地判平成27514日)は、Xによる馬券の購入は、…一般的な競馬愛好家による馬券の購入の態様と質的に大きな差があるものとは認められ」ない等として、本件所得は一時所得であり、外れ馬券の購入代金は控除されないとして、Xの請求を棄却しました(X敗訴)。
 ところが、
控訴審(東高判平成
28421日)は、本件所得は雑所得に当たるとし、外れ馬券の購入代金は「必要経費」に当たるとして、第一審の東京地裁判決を取消しました(国の逆転敗訴)。
 これに対し、国が上告していたところ、最判平成291215は、国の上告を棄却し、控訴審判決を維持したのです(国の敗訴確定)。

(4) 最高裁は、まず、本件所得が一時所得、雑所得のいずれであるかについては、大阪事案の最判平成27.3.10が定立した規範(利子所得…以外の所得で、営利を目的とする継続的行為から生じた所得は、一時所得ではなく雑所得に区分されるところ、営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは、文理に照らし、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を相当考慮して判断するのが相当である)をあげた上で、「(2)」に書いた事実をあてはめました。すなわち、「X馬券購入の期間、回数、頻度その他の態様に照らせば、X上記の一連の行為は、継続的行為といえるものである。そして、Xは、上記6年間のいずれの年についても年間を通じての収支で利益を得ていた上、その金額も、…というのであるから、上記のような馬券購入の態様に加え、このような利益発生の規模、期間その他の状況等に鑑みると、Xは回収率が総体として100%を超えるように馬券を選別して購入し続けてきたという得るのであって、そのようなXの上記の一連の行為は、客観的にみて営利を目的とするものであったということができる。以上によれば、本件所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として、所得税法35条1項にいう雑所得に当たると解するのが相当である。」と判示しました。
 その上で、外れ馬券の購入代金が必要経費にあたるかについては、「そのような一連の馬券の購入により利益を得るためには、外れ馬券の購入は不可避であったといわざるを得ない。したがって、本件における外れ馬券の購入代金は、雑所得である当り馬券の払戻金を得るために直接に要した費用として、同法37条1項にいう必要経費に当たると解するのが相当である。」と判示しました。


(5) そもそも、通常、2分の1課税により一時所得の方がお得と思われるのに、なぜ、大阪事案や北海道事案の納税者は、一時所得ではなく、雑所得であると主張したのでしょうか。
 これは、一時所得においては、総収入金額から控除できる「収入を得るために支出した金額」は「その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた行為をするため、又はその生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る」とされているところ(所得税法34条2項かっこ書)、公的年金に係るものを除く雑所得において、総収入金額から控除できる「必要経費」(同35条2項2号)は、「直接に要した費用の額」のほかに、「販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」(同37条)も含まれるとされているからです。つまり、当たり馬券の払戻金を得るためにかかった経費として、当たり馬券の購入費のみならず、外れ馬券の購入費をも含めたいと思えば、雑所得と主張した方が有利だと思われるわけです。外れ馬券も含め、大量かつ網羅的に馬券購入に資金を投下したからこそ、当たり馬券の払戻金を得ることができたというわけですね。

 第一審が結論を異にした背景には、北海道事案のXは大阪事案のようなソフトウエアを用いていなかったことのほか(Xはインターネットを介して馬券を購入するA-PATは利用していました。)、第一審が指摘する「馬券の購入履歴や収支に関する資料が何等保存されていないため、X網羅的に馬券を購入していたのかどうかを含めてX馬券購入の態様は客観的には明らかでない」という事情があったように思います。
 一時所得に関する所得税基本通達については、前のブログでふれました。普通は、競馬で馬券をあてたことによるもうけは、一時所得ですよね。第一審も、「競馬は公営賭博であり、馬券の的中による払戻金の発生は、本来的に偶然性を排除することができない…そもそも競馬における馬券購入は営利を目的とする行為とはなり難い性質のものである」といっています。
 とはいえ、記録のある平成21年では、全レースの約7割で馬券を購入しているそうですし、6年連続で極めて巨額の利益をあげているのですから、やはり、大阪事案の最高裁の規範を素直にあてはめると、北海道事案の控訴審判決及び上告審判決の結論になるのではないかと思います。
 大阪事案では、100万円の元手で追加の資金投入はせずに多額の利益をあげていたそうですが、北海道事案のXは、どうだったのでしょうか。Xは、1節(競馬開催日又はこれが連続する場合における当該連続する競馬開催日を併せたもの等)当たり数百万円から数千万円の馬券を購入していたという認定ですし、大量かつ網羅的に馬券を購入しないと偶発的要素を減殺できるとは思えません。そもそも、情報を収集・蓄積・分析し、着順を予想するという部分が、それなりの労力を要するのではないかと想像します(具体的な想像はまったくできませんが…)。報道等によれば、Xには、別の定職があったようですが、どのくらいの労力を費やしていたのでしょうか。投下すべき資本がそれなりに必要だったり、情報収集・蓄積・分析にかなりの労力を要するとしても、大阪事案や北海道事案の納税者がそのノウハウを公開すると、公営賭博たる競馬の存立に影響を与えたりしないのでしょうか。また、そのノウハウは、他の分野に活かせたりしないのでしょうか。
 やはり、訴訟の争点とは違うところに興味が行ってしまいます(笑)。

3.クリスマスイブ

(1) 今日はクリスマスイブですね。
 今年のクリスマスツリーは、我が家にある4種類の飾りつけのうち、一番初めに揃えはじめたもので、赤、金、ガラス(含透明なプラスチック、クリスタルなど)を基調にしています。



 
    今年はツリーには、ちょっと地味なLEDライトをつけてみました(↑)

昼間は、日の光で
オーナメントがキラキラします。

   
長年、買いためた
クリスタルのトーナメント。
でも、意外に、ツリーに飾ると
普通のガラスのオーナメントの方が
きれいだったりします。

   
クリスマスイブの食卓。


(2) I wish you a Merry Chiristmas!

なお、過去3年のクリスマスツリーはこちら(↓)
ちょっとやばいですね(笑)。
押入れの一角をオーナメント類が占拠しています。
これ以上増やさないように気をつけています!
昨年
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一昨年
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一昨々年
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