1. 年が明けて、バタバタとしてブログを更新できずにいたら、あっという間に、1月も残すところあと数日…(汗)。
事務所のホームページには、何とか、「事務所通信第4号」(平成27年1月15日号)を掲載しました…
今回は、先月上海市静安地区の弁護士との共同セミナーで発表したテーマ「国際的二重課税回避の基本的枠組み」をメインに、投資信託の共同相続に係る近時の判例(最判平26.2.25、最判平26.12.12)も、とりあげています。
今回は、どちらも、ちょっぴりマニアックだったでしょうか。特に、前者については、枝葉にはこだわらず、何とか幹をお見せしようと頑張ってみました…。それでも、力及ばず、どうにも読みにくいかもしれませんが、新しい分野に興味を持っていただくきっかけとしただければ、大変、嬉しいです(逆に、少しでも関わりのある方には、新味のない記載となっていることと思います)。
事務所のホームページには、何とか、「事務所通信第4号」(平成27年1月15日号)を掲載しました…
今回は、先月上海市静安地区の弁護士との共同セミナーで発表したテーマ「国際的二重課税回避の基本的枠組み」をメインに、投資信託の共同相続に係る近時の判例(最判平26.2.25、最判平26.12.12)も、とりあげています。
今回は、どちらも、ちょっぴりマニアックだったでしょうか。特に、前者については、枝葉にはこだわらず、何とか幹をお見せしようと頑張ってみました…。それでも、力及ばず、どうにも読みにくいかもしれませんが、新しい分野に興味を持っていただくきっかけとしただければ、大変、嬉しいです(逆に、少しでも関わりのある方には、新味のない記載となっていることと思います)。
「事務所通信第4号」はこちら(↓)
2.(1) ところで、今日は、以前とりあげたハーグ条約(「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」)について、少し、補足してみたいと思います。
昨年末になってしまいましたが、日本経済新聞(平成26年12月24日朝刊)において、日本人の子供に初めて同条約が適用されたケースについて、以下のように書かれていました。
「日本人の子供初めて同条約が適用されたのは今年7月。日本人の父親が英国の裁判所に申し立て、日本人の母親と一緒に渡英した子供(当時7)に日本への返還命令が出された。日本に帰国後、大阪家裁で調停を行い、母親の暮らす英国に戻る結果となった。」(太字は筆者)
これ以外の情報は得ておりませんので、詳しいことはわかりませんが、この結果は、ハーグ条約の特徴をよく示しているのではないかと思います。
昨年末になってしまいましたが、日本経済新聞(平成26年12月24日朝刊)において、日本人の子供に初めて同条約が適用されたケースについて、以下のように書かれていました。
「日本人の子供初めて同条約が適用されたのは今年7月。日本人の父親が英国の裁判所に申し立て、日本人の母親と一緒に渡英した子供(当時7)に日本への返還命令が出された。日本に帰国後、大阪家裁で調停を行い、母親の暮らす英国に戻る結果となった。」(太字は筆者)
これ以外の情報は得ておりませんので、詳しいことはわかりませんが、この結果は、ハーグ条約の特徴をよく示しているのではないかと思います。
以前も触れました通り、ハーグ条約の大きな特徴として、返還事由が認められる限り、子の常居所地国に返還することを原則としていることがあげられます。これは、「一旦生じた不法な状態(監護権の侵害)を原状回復させた上で,子がそれまで生活を送っていた国の司法の場で,子の生活環境の関連情報や両親双方の主張を十分に考慮した上で,子の監護についての判断を行うのが望ましいと考えられているから」(外務省のHPより。太字は筆者。)等と説明されています。つまり、子を連れ去られた親(Left Behind Parent, LBP)への返還を直接的に目的としているのではなく、ひとまず、子の常居所地国へ返還し、子の常居所地国で、親権や監護権について判断しましょうという考え方に基づいているということです。
なので、上記の通り、英国の裁判所で日本人の子供に初めてハーグ条約が適用されて日本への返還が命じられたケースでも、子の常居所地国たる日本において調停手続が行われ、結局、母親の暮らす英国に戻ることになったというわけです。
なので、上記の通り、英国の裁判所で日本人の子供に初めてハーグ条約が適用されて日本への返還が命じられたケースでも、子の常居所地国たる日本において調停手続が行われ、結局、母親の暮らす英国に戻ることになったというわけです。
以前のブログ(↓)
(2) また、上記のケースは、親子とも日本人、子の常居所地国も日本ということのようですが、子の常居所地国法と、親や子の本国法が異なる場合、必ずしも、子の常居所地国の法律に基づいて、親権や監護権等が判断されるとは限りません。
法律の専門家でないと、例えば、日本の裁判所においては、日本の法律しか適用されないと思われている方がいらっしゃるかもしれません。
しかしながら、日本ならば、「法の適用に関する通則法」という法律があって、同法32条は、
「親子間の法律関係は、子の本国法が父又は母の本国法(父母の一方が死亡し、又は知れない場合にあっては、他の一方の本国法)と同一である場合には子の本国法により、その他の場合には子の常居所地法による」
と規定しています。本条により、例えば、父が日本人、母と子がA国人なら、「親子間の法律関係」には、原則として、A国法が適用されることになります。本条の「親子間の法律関係」とは、親権や監護権の帰属、内容、喪失等といった問題を指し、離婚に伴う子の親権の帰属等についても、原則として、本条の定める法律が適用されます。
このように、国際的要素を含む私的法律関係に、どこの国の法律を適用するかを決定する(準拠法を決定する)法律を、一般に、「国際私法」とよんでいます。
この「国際私法」が世界中で統一されていれば、どこの国で裁判が行われても、同じ国の法律が準拠法となり安心ですが、残念ながら、「国際私法」は、原則として、各国の国内法にとどまっているというのが現状です(それこそ、ハーグ国際私法会議(*)で、その国際的な統一についての努力が続けられています)。
つまり、子が常居所地国へ返還された後、子の常居所地国の司法において親権や監護権についての判断をあおぐ際、もし、子の常居所地国法と、親や子の本国法が異なっている場合には、必ずしも、適用される法律が子の常居所地国法になるとは限りません。どの国の法律が適用されるかは、原則として、子の常居所地国の国際私法により決められる…というわけです。
法律の専門家でないと、例えば、日本の裁判所においては、日本の法律しか適用されないと思われている方がいらっしゃるかもしれません。
しかしながら、日本ならば、「法の適用に関する通則法」という法律があって、同法32条は、
「親子間の法律関係は、子の本国法が父又は母の本国法(父母の一方が死亡し、又は知れない場合にあっては、他の一方の本国法)と同一である場合には子の本国法により、その他の場合には子の常居所地法による」
と規定しています。本条により、例えば、父が日本人、母と子がA国人なら、「親子間の法律関係」には、原則として、A国法が適用されることになります。本条の「親子間の法律関係」とは、親権や監護権の帰属、内容、喪失等といった問題を指し、離婚に伴う子の親権の帰属等についても、原則として、本条の定める法律が適用されます。
このように、国際的要素を含む私的法律関係に、どこの国の法律を適用するかを決定する(準拠法を決定する)法律を、一般に、「国際私法」とよんでいます。
この「国際私法」が世界中で統一されていれば、どこの国で裁判が行われても、同じ国の法律が準拠法となり安心ですが、残念ながら、「国際私法」は、原則として、各国の国内法にとどまっているというのが現状です(それこそ、ハーグ国際私法会議(*)で、その国際的な統一についての努力が続けられています)。
つまり、子が常居所地国へ返還された後、子の常居所地国の司法において親権や監護権についての判断をあおぐ際、もし、子の常居所地国法と、親や子の本国法が異なっている場合には、必ずしも、適用される法律が子の常居所地国法になるとは限りません。どの国の法律が適用されるかは、原則として、子の常居所地国の国際私法により決められる…というわけです。
*ハーグ国際私法会議(Hague Conference
on Private International Law)
1893年以来、オランダのハーグに本拠を置いて、国際私法の世界的な統一のための条約の作成作業を続けている国際機関。今回とりあげているハーグ条約(「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」)も、ハーグ国際私法会議で採択された条約の一つです。
⇒ <後記>
「ハーグ条約の基礎」を事務所通信第7号に載せました。
http://www.hisaya-ave.com/tsushin7-7.html
PDF版はこちら。
http://www.hisaya-ave.com/jimushotsushin7/jimushotsushin7.pdf