2015年10月31日土曜日

ハロウイーンと万聖節


1.   10月も最後の日になりました。
 今夜は、ハロウイーンですね。
 以前にも書いたように思いますが、ハロウイーンに、仮装したり、お菓子をもらいにまわったりという習慣は、私の小さいとき、少なくとも、身の回りにはありませんでした。今や、バレンタインも凌ぐ国民的行事に成長しつつあるとか…。
 ハロウイーンは、ケルトに起源があるお祭りといいます。昨日の日経夕刊によれば、「10月31日は古代ケルト文化における大晦日で、霊界との境界が開いて魔物が出現しやすくなるとされ、そこで人間みずから幽霊や異形に変身仮装する習わしが生まれたようだ。」(松井今朝子さん記)とあります。北半球では、丁度、収穫が終わり、夜の闇が深く長くなる頃。霊界との境界が開くという感覚が、何となく馴染むような気がするのは、気のせいでしょうか…。
 ところで、
”Halloween”という単語は、”All Hallow Evening”を語源としているそうです。
 カソリックの暦では、111日は、万聖節(All Saints’ Day)。Hallowというのは、聖人の意。そして、1031日夜は、その前夜(eve)というわけです。
 
そもそも、カソリックでは、11月は「死者の月」とされ、万聖節の翌日112日は、「死者の日」です。私が通っていたミッションスクールでは、毎年11月初めに、「死者ミサ」がとりおこなわれていました。もっとも、お恥ずかしながら、たいした記憶は残っていません。ただ、ハロウィーンの説明を万聖節と絡めて受けたのでしょうか…つい最近まで、二つを混同して覚えていました。
 

2.  ハロウイーンにかぼちゃ(Jack-o’ lantern)を飾るのは、アメリカの習慣で、スコットランドでは、カブを飾っていたそうです。
 また、ハロウイーンにカボチャを食べる習慣はないそうですが、今夜は、何となく(笑)、カボチャのスープをつくっていただきました。

 
左上は、母からもらったアレンジメント。
右上は、ダイソーのランタン。お気に入りです




2015年10月9日金曜日

「日本酒」の「地理的表示」について


1.  10月に入り、秋空が広がり、街には、金木犀の香りが漂う季節になりました。
 毎年、この季節になると、漂う甘い香りから、こんなところにも金木犀があったんだ…と感心するのですが、そこで、いつも思い出す話…。金木犀は、雌雄異株なのに、中国から日本に入ってくるときに、どちらか一方しか入ってこなかったのだとか…。そのため、日本では、金木犀が実を結ぶことはなく、日本中の金木犀は、すべて、挿し木により増えたのだといいます…。

 

2. 「日本酒」の「地理的表示」について

(1)中国産日本酒
 ところで、二週間ほど前、Mr.サンデーで、中国産日本酒について放送していました。その生産工場の規模と質に、驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 私は、偶々、この夏、「知財ネット」のジャパンコンテンツ調査研究チームのメンバーとして、愛知・名古屋の日本酒と味噌の伝統的醸造法等について調べ、「地理的表示」保護制度等と絡めて、「知財ぷりずむ」という雑誌に寄稿したので、思わず、関心を持ってみてしまいました。(寄稿した記事は、「知財ネット」のウェブサイトにでています↓)
 http://www.iplaw-net.com/doc/2015/chizaiprism_201508_2.pdf
 取材を受けていらした中国の生産者の方は、日本の酒蔵を視察する等して、日本の醸造方法に敬意を払っていらっしゃるように見受けられました。
 とはいえ、海外の日本レストランで、件の中国産日本酒を飲んでいらっしゃった方々は、中国産ではなく、日本産だと思っていたとのこと。この点は、問題なしとはいえないのではないでしょうか…(Made in Chinaとの表示はあるようですが…)

 やはり、遅まきながらも、「日本酒」というブランドを、「地理的表示」等で、保護することが必要なのではないかと思ってしまいます。

(2) 「地理的表示」とは
 「地理的表示」として有名なのは、フランスの「
AOC」や、イタリアの「DOC」でしょうか。フランスワインのAOCAppellation d'Origine Contorolee)では、地方⇒地区⇒村⇒畑といった風に単位が狭まっていき、AOCが狭い単位の方が、狭い単位で獲れた葡萄しか使用できませんので、一般的には高級ワインとなります(例えば、ボルドー地方>メドック地区>ポイヤック村という順に、狭くなっていきます)。
 フランスやイタリアでは、19世紀中頃には、原産地の名を冠したワインやチーズが生産されるようになり、1883年に締結された「工業所有権の保護に関するパリ条約」等により、世界的に、原産地の虚偽表示が取り締まられるようになっていきました。
 更に、世界貿易機関(WTO)の設立協定の一部である
1994年のTRIPS協定Agreement on Trade-Related Aspect of Intellectual Property Right、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)においては、「地理的表示」(GIGeographical Indicationは、著作権、商標、特許等と並んで、知的財産権の一つとして取り扱われています。
 なお、EUにおいては、EU連合の成立にあわせ、EU全体に適用される仕組み(PDO/PGI)が導入されています(フランスのAOCは、EU制度のPDOと同内容のものとされ、両制度は併存しています。詳しくは、「地理的表示の保護制度についてーEUの地理的表示保護制度と我が国への制度の導入ー」等をご覧ください)。

(3) 日本の酒類に関する「地理的表示」
 
TRIPS協定では、ワイン(ぶどう酒)蒸留酒について、一定の義務付けがあり、日本でも、酒類については、いち早く、地理的表示保護制度が導入されました(平成6年に同制度が導入され、平成17年には、TRIPS協定で義務付けられていない清酒についても、同制度が導入されています。「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」881項に基づく「地理的表示に関する表示基準」参照)。
 もっとも、現在、指定されているのは、ワイン1件(山梨)、単式蒸留しょうちゅう4件(壱岐、球磨、琉球、薩摩)、清酒1件(白山)のみ(国税庁告示「地理的表示に関する表示基準第2項に規定する国税庁長官が指定するぶどう酒、蒸留酒又は清酒の産地を定める件」参照)。これらの産地を表示する「地理的表示」は、当該産地について定められた方法で製造されたワイン、単式蒸留しょうちゅう、清酒でなければ使用できません。が、正直言って、未だ、日本の酒類業界において、「地理的表示」が浸透しているとはいいがたいのではないでしょうか。たとえば、愛知・名古屋の酒といっても、愛知・名古屋の原料(酒米)のみを使用しているわけではないでしょうし、製造方法も必ずしも産地特有とまではいえないことも多いでしょうから、特定の日本酒の産地が地理的表示として指定を受けるのは、意外に、ハードルが高いのかもしれません。

(4) 「日本酒」の「地理的表示」
 国税庁は、日本国内の特定の産地の日本酒を保護するだけではなく、「日本酒」自体を「地理的表示」として保護する意向のようです。

 平成27917日付の国税庁の資料によれば、「国際的にみれば国も一つの地域であり」「国レベルの地理的表示として、『日本酒』を指定することを検討中」であるとしています。その場合、「国産米原料とし、かつ、日本国内製造された清酒」を地理的表示「日本酒」の対象と考えているようです。
 「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」は、国内法ですが、「国際交渉を通じて、外国に対しても、日本酒に該当しないのに日本酒と表示している商品の取り締まりを求めることが可能」等としています(TRIPS協定における地理的表示制度は、世界貿易機関(WTO)の多数国間通報登録制度の成立を前提としており、当該制度が成立していない現状では、世界貿易機関の加盟国との交渉等を通じて、外国の地理的表示の確認を行っていくとのことです。)。